アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
もうひとつ、同じ時期につくったのが、東京の真ん中にあるスモールハウスという小さな住宅です。
建物の規模そのものが小さいと、ちょっとした誤差のような、すごく小さいスケールのことが全体に影響を与えます。つまり大きな建物ではとるに足らないようなことが、小さい建物では決定的になってくることがあるのです。何かその小さなことの可能性を考えたいということが設計の出発点です。もうひとつ考えたことは、今まで単純な形ばかりつくってきたので、もう少し形自体が主張するようなこと、たとえば床を曲げてみるとが、壁面を傾けるとがそういったことを試みたいということです。
まず最初は、建蔽率いっぱいに6メートル弱四方の四角い建物を建てることを想定しました。そして、その中にリビングとベッドルーム、浴室と予備室を配分していくということを考えていったのですが、そのうち、もともとがすごく小さなフロアをさらに分割していかなくてはいけないということに疑問を感じ始めました。だったら必要な要索を積み重ねた方がいいのではないか、さらに必要なサイズもそのまま積み重ねたらどうだろうと思ってやってみたのです。すると、いろいろなことが解決されていきました。
この建物ではパーキングをどうするかが一番の問題だったのですが、建蔽率いっぱいに建物をつくると、ピロティをつくりそこをパーキングにするか、地下に車を入れるしかありません。しかし、ピロティにすると、どうしても建物が地面から離れていってしまいますし、地下に入れるとなると敷地の半分を車のために使わなくてはならなくなります。それで建蔽率いっぱいにつくることはやめて、小さい面積しか必要としない予備室を一階にもってくることにしました。
また壁面を傾けることで隣地との関係を調整することができました。ここは隣地に近づいてもいいとか、ここは離れた方がいいとがいう状況に合わせて、壁面を計画することができました。また、内部でも同様に、外壁が隣地に近づけば中央の階段と外壁との距離が広がってキッチンカウンタ−が置けるようになったり、逆に距離がなくなればただの廊下になったりと、ほんの数センチの調整でプランが決まってくるのです。また、外壁の傾斜が徴妙に違うので、いる場所によって普通の四角四面の空間とは少し違った視線が生まれます。このことで今までにはなかった外との関係が、インテリアに取り込めたかなと思っています。構造的には、真ん中の階段が水平力を受けています。