アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
次は、同じ台湾の台北市内に2013年に完成した、「台湾大学社会科学部棟(2013年)」をご紹介します。既存の台湾大学のキャンパスの拡張に伴い、社会科学部の新校舎を設計することになりました。
建物は平屋の図書館棟と、八層の教室棟で構成されています。これらの建物の配置には、周辺のコンテクストを考慮することが問われました。そこで、長手が168メートルにおよぶ教室棟を外部道路に沿って配して四方が囲まれた中庭を完結させ、その中庭内に図書館棟を極力低く抑えて設けました。教室棟には、三層分の大きな吹き抜けが設けられており、その中央部には国際会議場があります。また、教室棟は、自然の空気が流通する環境がつくられています。教室や研究室の間にいくつかの吹き抜けを設けて国際会議場の入る大きな吹き抜けと繋げ、空気が上へと抜け、光が上から落ちてくる、なかなか快適な空間ができました。
中庭の既存樹木を保存し、その環境が延長していくイメージで、木の下で本を読むような図書館の空間をつくりたいと考えました。図書館棟は、約50メートル四方の正方形の平面を持ち、屋根のパターンと柱の位置、また、周囲のランドスケープは、三つの中心から、放射状に広がっていく蓮の花のようなパターンが連続するアルゴリズムによって決定しました。それにより、図書館の柱には密なところと粗なところが繰り返し現れてきます。その柱の疎密が空間の違いを生み、自分の好きな場所を選んで本を読むことができる読書空間ができました。まるで木々の間から射す木漏れ日の下で本を読んでいるような体験ができます。
また、放射状に配置された書架は、いつもコラボレーションしている家具デザイナーの藤江和子さんにお願いし、竹の集成材でつくっていただきました。台湾は竹細工が有名で、その職人さんがこの書架をつくってくれました。非常に強くてきれいな書架ができました。
このプロジェクトでは、木々の中で本を読むイメージを、疑似体験的な空間としてつくったわけです。しかし、所詮これは人工環境です。もっと実際に風を感じるような空間がつくれないか、それをどうすれば実現できるかが、最近の私の興味の対象となってきました。