アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
先にお話ししたとおり、「CapitaGreen」の正式なオープニングは2015年9月で、オープンして間もないものですから、まだ分からないというのが正直なところです。植栽には灌水をしていますが、まだまだこれから伸びていく最中です。むしろ、この先伸び過ぎた時にどうするのかというのが問題になるでしょうね。また、おそらく、植栽はほとんどが常緑樹なのではないでしょうか。ですから、落ち葉の問題はないと思いますが、育ち過ぎてどうなるかは私にも分かりません。建主のCapitaLandも、それについてはかなり検討はしてくださったようですが、大丈夫だろうという判断をされているので、私もそんなに心配してはいません。また、1年経った時にどうなったかご報告できればと思います。
そんな大それたことは考えませんが、たとえば「みんなの森ぎふメディアコスモス」では、この建築ができることによって岐阜の人たちの人間関係が少しは変わるのかなということは思ったりします。私は建築をつくっている人間で、政治家でもなんでもないですから、そんな私でもできることというと、今の大都市で非常に寒々とした関係になってしまった人と人の関係を、私のつくる建築がきっかけとなってもう少しよい方向に戻せるとよいなと思っています。
先日韓国で、ある小さなコンペティションの審査員をしてきました。もうひとりの審査員は中国の方で、韓国で民間企業を主宰されている方なのですが、そのコンペティションで世界各国からの応募案を審査し、その審査員の方とお互いの思想をかなり共有することができました。たとえば、私が最近考えている自然と建築との関係をどう変えていくことができるのかということについては、中国も韓国も日本も、それぞれの国家間の問題や関係性は、まったく関係ないですよね。また、2015光州デザインビエンナーレでインスタレーションを行ったのですが、文化や建築というレベルで、他の国とよい関係をつくっていくことは可能で、これは積極的にやっていくべきだと思います。
もちろん、それ以上のことについては、限界もあると思います。昔韓国でレクチャーした際には、「おまえの建築は未来を向き過ぎている、もっと過去を振り返れ」と言われたことがありました。なかなか厳しい意見だなと思いました。建築は、経済や政治などすべてと絡んでいますから、そう感じる人もいるだろうと思います。ただ、こういう時にこそ、アジアの近い国と思想を共有するということはすごく大事だと感じました。
歴史に関しては、そこまで深く考えてはいなかったと思いますが、建築が建つ場所については検討をしました。それはもう、すごく素朴なことですが、特に北側と西側は住宅地と隣接しているので、できるだけ低いボリュームを計画した方がよいだろうと考えました。コンペティションの最終段階で槇 文彦さんと競っていたのですが、槇さんはもう少し背の高い建物を提案されていました。それに対して、私は低い方が絶対によいと思い、できるだけボリュームの高さを抑えることを第一に考えていました。
それから、ランドスケープに関しては、石川幹子さんが関わってくださって、ご自身でも木を一本一本植えるのを手伝うくらい、熱心に頑張ってくださいました。植栽は当然、この地域の植生との関係で選ばれています。並木は、最初は東海地方特有のヒトツバタゴという、岐阜のところどころに見られる珍しい樹木でつくろうと考えられていたのですが、とても何十本も揃わないということ、また、ヒトツバタゴは生長が遅いらしく、できるだけ生長が早いことが望ましいということで、カツラに変わりました。
また、地元の岐阜県産の樹木を多く使っているのですが、そういった地域との関係性というのも、ここ数年でずいぶん変わってきたと思います。「せんだいメディアテーク」では、むしろあまり素材感を出さないことを主張していたのですが、最近では、視覚的な建築から、香りを感じるとか、手触りを大切にするといったことも建築において着目されるようになってきました。「CapitaGreen」では、シンガポールの土で土壁をつくっています。こういったことが、少しずつできるようになってきていますね。いまだに、世の中には抽象的で素材感のない建築、透明な建築が多いように思います。もう、その先には何もないんじゃないでしょうか。近代の美学を突き詰めていくようなやり方もあるのでしょうけど、最近では私は、その先にいったいどういう可能性があるんだろうと疑問に思ってしまうのです。
シンガポールはあまり歴史がなく、現在は近代化まっしぐらという国ですから、地域の固有性や歴史を取り上げるのは非常に難しいです。以前、シンガポールで「VivoCity(2006年)」という商業施設を設計しました。そこでは、ちょうど「台中メトロポリタン・オペラハウス」のエントランス前の池のように、屋上に池を設けました。これも、鑑賞するための池だったんですが、子どもたちが服を着たまま入り始め、それにつられてその子の親たちもじゃぶじゃぶと池に入ってしまいました。それを見た時に、アジア人の血の中に流れている、「水の中に入りたい」という潜在的な願望が、シンガポールの人たちにもあるんだなと感じ、歴史や文化が異なる土地でも、そういった人間本来の動物的な感受性みたいなものに、建築や空間がアピールしていくことならできるのかなと思いました。
「みんなの森ぎふメディアコスモス」設計中から、市庁舎を当敷地の南側に新築移転しようとしている話は聞いていました。市庁舎は市庁舎で別途コンペティションが行われているようです。それについては、私はまったく関知していなかったのですが、北側の「みんなの森 ぎふメディアコスモス」に配慮して、できるだけ日照を妨げないよう低層部分は高さを揃えるなど、いくつかのルールで設計が進行しているらしいので、そんなにむちゃくちゃなものは建たないだろうと思います。
おそらく海外だったら、こちらを設計してくれたから、あちらも同じく設計してよと任されるところだと思うのですが、日本では、もう既にひとつ設計したのだから二度やると変に疑われるぞ、という考え方をする世界ですから、設計者は別となったのでしょうね。
1階部分は、2階のコンクリートの床を支えなければいけないので、どうしても700ミリメートルという柱の太さが必要となります。それに対して2階では、柱は非常に軽い木造の屋根を支えればよく、また屋根は、フラットではなくシェルというドームの連続体のような構造形式になっているので、柱のスパンをより長く飛ばし本数を少なく、また、柱を190.7ミリメートルと細くすることができるのです。なお、風や地震による屋根にかかる横の力は、周辺部の壁に鉄板を入れ、そこで受け持っています。