アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
日建設計についてご説明する上で、まずご覧いただきたいデータベースがあります。それは、これまで日建設計に在籍した6,000人以上の社員全員の情報を検索できる「NIKKEN GALAXY」(2020年、日建設計デジタルデザインラボ)です。一人一人の情報がさまざまなフィルターで関連し繋がりながら集まっていて、まるで星雲のようにも見えます。この一人一人の集合こそが、日建設計なのです。本日のレクチャーでは、これまで日建設計が培ってきた人を中心とした設計の文化について、十章に分けてご紹介したいと思います。まず一章は「日建設計の内幕とはどういうものか」です。
会社の基本理念を紹介します。
価値ある仕事によって社会に貢献する
それを通じて個人は成長する
会社も発展していく
たったこの3行だけですが、日建設計の創立から変わらず120年以上この理念を継承してきました。実は、この3行にも日建設計の宝は人であることが示されています。まず第一に「社会に貢献すること」が書かれており、続く言葉が「個人の成長」です。「会社の発展」は個人の成長を前提にしています。会社の基本理念のほかに、個人の行動規範もあります。これも古くから連綿と継承されておりまして、1933年、住友家から独立した日建設計の前身、長谷部竹腰建築事務所まで遡ります。34項にもおよぶ「所員心得」です。そこには、たとえば「盆暮はもちろん、平素のときでも些細なものでも贈り物を受けたときには事務所に届け出てください」ということまで事細かに書かれています。設計という専門職能を身に付けて成長の機会をつくるだけでなく、一人の社会人として行動をきちんと正すという心得です。3年前に日建設計は創立120周年を迎えましたが、こうした会社の礎ともいえる姿勢が通底していることに気付かされます。
竹腰健造(1888〜1981年)
長谷部鋭吉(1885〜1960年)
さて、話は創業時から現代へ飛びます。2020年に、宮沢洋さんが著した『誰も知らない日建設計 世界最大級の設計者集団の素顔』(日本経済新聞出版、2020年)が発売されました。この本には、特に設計部門の内幕が詳しく紹介されています。書籍の帯には「縛られ嫌い3,000人が自由に動くかくも不思議な組織」というコピーが書かれていますが、まさにその通りだと私自身も感じています。その本でも紹介いただいているデザイン戦略「NIKKENDESIGN GOALS」(日建デザインゴールズ)について少し触れたいと思います。
2020年の創業120年の際に、日建設計が目指すデザインの指針を示しました。実はデザイン戦略を立てたのは創業以来はじめてのことです。それまで、どのようなデザインをすべきかというものが明確に書かれたものがありませんでした。52のゴールを15のカテゴリーに分類し、地球環境のことやウェルネス、レジリエンスのことなど、カテゴリーごとになにをゴールとすべきかについて示されています。それぞれの設計担当者が自らゴールを設定しても構わないことにしていますが、デザイン会議、デザインレビューの時に必ずこの日建デザインゴールズを表明してもらうようにしました。設計案という形ある実態だけでなく、その背景や思想まできちんとクライアントへ伝えていこうという試みです。まだ、始まったばかりですので、正直手探りなところも多く、うまく運用する方法を模索しています。
創業以来はじめて体系的にまとめたデザイン戦略
「NIKKEN DESIGN GOALS」のダイアグラム
日本経済新聞出版、2020年