アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
この講演録を読み返してみると、内容があちこちに飛び、結果として実にまとまりのないことを申し訳なく思います。設計の組織とそこに属するわたくし個人を同時に語ることの難しさ、さらにその組織の内側でどのような人間模様が日々繰り返されているかをお見せすることの難しさ、をあらためて思います。とはいえ、できるだけありのまま、誇張も卑下もしないで語るよう努めました。
当たり前のことですが、クライアント(顧客、建築主、施主)から依頼されなければ、わたくしたち設計者は何事も始めることができません。常にクライアントの「用」があってはじめて仕事になるのです。このことが、自分たち自身で計画立案しつくり出し販売する数多くの職業と異なる、わたくしたちの仕事の特殊なところです。
この仕事は、毎度毎度、依頼主も敷地も建物種別も規模目的も予算も、なにもかもが違います。その上、幸運にも日建設計に舞い込んできた仕事を、では誰に、どのチームに担当させるのでしょうか。ここまでくると、一期一会、ほとんどくじ運を競う、という状態です。それをあらかじめ予期、予想、予言することなんてできるわけがありません。
こうなったら自らの「鈍感力」を発揮して、あらかじめ何かを期待しない→仕事がきた時には全力でなんとかする→唯、今を生きる、という思考回路になってきます。実はこの日々不確かということ、これが一番の面白さと言えるのではないでしょうか。未来は予想を必ず上回ってやってくるのです。さて、日建設計の明日ははたしてどんな仕事をしているでしょうか。
大谷 弘明