アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
これは駿河台にあります。「東京YWCA会館」です。周辺には大正海上本社ビルなどの大きな建物が建っています。ここに六〇年前に建てられた非常に魅力的な様式建築があって、長い間ひとつの私意ぼるとして人々に親しまれていました。アメリカ人建築家ヴォーゲルの設計で、カリフォルニア・ミッションスタイルの建物で、左右対称で屋根にはスペイン瓦が載った建物でした。僕たちはなんとかそれを保存したいと思ったんですが、物理的にも効率的にも駄目ということで、建て替えになりました。高層棟に貸しオフィスがあり、低層部分にYWCAのさまざまな施設が入っています。
ここでやったことは、既存の街並みのスケールと昔の建物のスケールをもう一度新しい街のファサードとしてつくり直すということでした。
会館建築というのはどこでもそうですが、内部が非常に複雑です。まず、講堂が要りますし、学校もあります。それからYWCA は特に女子体育を日本で普及させて歴史的な功績を立てたことを誇りにしていますから、プールとかジムがあります。そういういろいろなものが複合したビルですから、複合ビルとしての機能委を個々に満足させることが絶対条件となります。ただ満足させるだけでなく、それらが一体となってYWCAの活動が行われることに意味があるわけですから、その全体性を示すための工夫が必要となります。そこで生まれたのが、建物中央部に膨れ上がるロトンダを中心とするアトリウムです。これは四角い建物の中に内包したドームをいただく縦長の円形空間です。
全面の道から長いポーチを通ってアプローチしますが、ファサードとの連続性を意図して鉄骨のコロネードを立てました。そしてエントランスホールのロトンダとなります。その先にはチャペルがあり、その上に階段を上がると、左右いっぱいにスクリーンが立ち、後ろに建つ病院との境をつくっています。 そこがルーフテラスとなっています。ロトンダの中央の階段を降りるとプールとジムナジウムのロビーです。二階、三階には学校部分があり、やはりロトンダの中央を横切る階段で上り下りします。諸施設は全く新しくなっていますが、スタイルは前の建物のスパニッシュ・ミッション・スタイルを新たな形で踏襲しているといえます。
このロトンダ部分の階段では少し苦労しました。昔ながらの円形空間に添うような階段は、形はいいのですがそれで完結しすぎてしまう。動きが出ないんですね。ですから、ここでは、むしろスパッと切り込んだように配置して、階段がちょっと顔を出すことによって、中の動きが見えるという、そういう働きを持たせました。
複合した建物に中心となる空間をつくるというテーマは、ここ数年ずっと追求しております。東大の博物館のときには、たいへん細長い建物の中央に吹き抜けをつくり、そこにトップライトを設けて光を落とすという工夫をしました。こうした手法はやはりまた歴史的にいい例がたくさんあります。私は素直にそういうものから学ぼうといつも思っております。そういう空間で私がいちばん理想だと思っているのは、サー・ジョン・ソーンというイギリスの建築家が一八世紀につくった自邸です。建築家であり学者でもあった彼はローマの廃墟のいろんなものを蒐集していて、自分の家の中に展示している。そうしたものたちに当たる上からの光が実にすばらしいんです。
A・レーモンドの作品にもすばらしい実例があります。彼の雪深い新潟につくった教会「新発田カトリック教会」では、上から落ちてくる光が小屋組に当たってすばらしい空間になっています。上から落ちてくる光を計画するには、光が当たる何かを考えなくてはいけないんですね。そうでないと、ただ照明しているのと同じになってしまいます。