アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

マークアップリンク
トップ
私の建築手法
新居 千秋 - 建築の境界—文化運動としての建築
ENVIRONMENT DESIGN(=環境デザイン)の視点
2022
2021
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986

東西アスファルト事業協同組合講演会

建築の境界—文化運動としての建築

新居 千秋CHIAKI ARAI


«前のページへ最初のページへ次のページへ»
ENVIRONMENT DESIGN(=環境デザイン)の視点

諸外国において、Environment design (Urban Architecture Landscape)、特にUrban design(都市デザイン)が発達しています。日本の建設省と同じ領域のコントロールを英国ではDOE(Department of Environment=環境庁)が行っています。それは建物をつくりコントロールするというよりも、むしろ環境をつくり、コントロールするという視点が明確だからです。これは日本では、デザインプロセスにおけるWorld Wide Planning(世界のデザイン計画)から、クラフトに至るまでの体系が認識されていないからです。国連レベルからアセスメント、環境共生を踏まえて、日本の経済活動や発達のために切り倒される森林などの問題を、国と国との間で協議することなどが、World Wide Planningです。National Planningとは国全体のデザインや植生の在り方、アセスメントなどの問題です。そしてRegional Planningは東北地方、九州といった地方レベルの問題です。

さらにCivic designは道路や地方の問題であり、そしてCity Planningは量的コントロール、行政の部分を取り扱うものです。現在の日本的問題は、City Planning=都市計画の学問である都市工学や都市計画=デザインだという風潮をつくってしまったことにあります。都市計画はデザインよりも都市コントロールの問題で、むしろデザインとは一線を画すジャンルで、デザインに関与しないのが諸外国の通例なのです。また日本では都市計画の段階で、アーバン・デザイナーや建築家を入れずにデザインしてしまうために、日本の都市がいつでも同じ金太郎飴になってしまうのです。 私たちの事務所はデザインの体系の中でEnvironment designという視点を持ち、都市計画から超高層、小さいものでは爪楊枝の包装紙、ワッペンに至るまでデザインしています。それは都市とは、とてもアノニマスなものであり、頭だけでは考えられないものであり、都市の計画をしている一方、日常の小物やstreetの身体的感覚や経験は不可欠だと思っているからです。

公共建築に対するアプローチ—調査設計ということ

私が最初にした仕事は、「プラン・フォー・横浜」という本づくりです。十八年ぐらい前のことですが、横浜の町の二十五カ所のアーバン・デザインをひとつの本に、横浜市の人とまとめました。これはニューヨークのシティ・プランニングの本などを参考にしてつくりました。次の仕事は新本牧の街づくりの道標というもので、新本牧の全体計画を描いて、ひとつひとつのエリアについて細かく設計して、横浜市の人たちと決めていきました。調査設計といいますが、こういう概念はあまり日本にはありません。ドイツなど日本以外の国では、何人もの建築家に長期間考えさせて、この事務所でよさそうだと思ったときに建てています。また、東京に地域と、地方の地域における公共建築のばらつきを、五年ほどかけて調査しました。顕著なのは、都内では五〇〇メートル以内に公共施設が集中していますが、地方では二キロ以上離れないとありません。これらの調査をもとに、その地域にどういう建物がふさわしいか、その町が活性化するかなど考えています。

«前のページへ最初のページへ次のページへ»