アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
この建物を「MEDIATION(仲介する、橋渡し)」と名付けています。これは川本町、邑智町、桜江町、石見町、瑞穂町、大和村、羽須美村の邑智郡の七カ町村が共同して建築をつくるという、日本ではあまり例のないプロジェクトです。プログラムも第一期のホール、図書館、総合事務所、第二期以降のショッピングセンター、宿泊、音の博物館と多彩でした。私はこの建物を、いろいろな町や村、いろいろな人、いろいろな楽しさを橋渡しできる建築として考えています。また敷地に対しても、既存のコンクリートの擁壁を壊して、谷の上にブリッジのようにまたがり、その下に大階段(男坂)を通し、広場のレベルまで上げることにしました。擁壁を壊した部分に、再び既存の緑を復元してつくった公園の中の散策路(斜路=女坂)、その散策路で既存の学校のレベルを結び、環境との共生を図っています。空間の構成の手法としては、ブリッジ部分の建物の中に、柱脚の上のふたつの開いたVシェイプで、屋根の連続する梁を持つキャスト板を支えています。その単一の抽象化された空間による連続性は、はじまりも終わりもないシーンをつくり出すと思います。また外観はその地域のかたちに合わせ、内部を抽象化した空間とすることで、私のもうひとつの課題である地域性と抽象性を考えました。また第二期の音の博物館のプログラムを変えて、一部宿泊、一部プールなどの入る建物に、町の人たちと変えています。人口の少ない町に、多大なものをどうしてもつくる気になれないからです。
この建物は「WIND GATE」と名付けました。山香町はこの山と、反対側の北の山の上に、風車を乗せて、そこまで登る大階段がすでにあり、風と香の町の位置付けがあります。私たちのプロジェクトでも、それに呼応する大階段(男坂)と、その山裾の樹木を利用して自然公園をつくり、体の弱い人たちのための回遊路(女坂)を設けました。山頂に第一期として、庁舎、その後、アリーナおよびマルチホール、図書館などの複合施設をつくるものです。庁舎の町側の部分についているスロープ、第二期以降の町側の図書館などの壁についているスロープで、アリーナを挟んでやり、スロープを行き来する人たちが町から眺められるようになっています。異形鉄筋を使ったネット工法による透明性の高いアリーナを挟み込むWIND GATEを形成しています。アリーナの下には二五〇〇平方メートルの楕円形の広場があり、アンフィシアターとしても機能します。その門を通り過ぎた扇形回廊で囲まれた緑の広場を加えると町全体の一〇〇〇〇人の人たちが集うことができます。
一般に日本でいう超高層ということばには、英語ではハイライズとスカイスクレーパーということばがあります。単に高いという意味でのビルディングは、ハイライズと呼びます。天に届き、人間の意志を感じ、空を引っ掻くという意味も含めて、個性のある、意志の見える超高層をスカイスクレーパーと呼んでいます。誤解されるといけないのでいっておきますが、ポスト・モダンの屋根上に変なものが乗っている日本の超高層をスカイスクレーパーとは呼ばないんです。それは四角いミースの「シーグラムビル」のようなものでも高い意志が感じられる建物を呼んでいます。
私は今までいくつかの摩天楼のプロジェクトをやりました。新宿の超高層のプロジェクトで、「STAR SHIP ONE」というものをやりました。それはテレビ局の建物ということもあって、ジョウジ・ルーカスやスティーブン・スピルバーグたちなどのSFXのスタッフと組んでテレビ局の宣伝も兼ねてプロジェクトを考えました。どかない人はそのままにして、ブレードランナーのシーンのように路地から入って行くとアトリウムに通じるというものでした。
MM21では、いろいろな超高層の基本的プログラムや案を、横浜市の委託で書いて勉強しました。
今度のスカイスクレーパーは高さ一〇〇メートルぐらいです。やはり、マザーボード=母船というニックネームです。白く浮かび上がるような長方形の超高層の最上階の中にマザーボードが浮かび上がることを考えています。なるべくひとつの建物に要素を終結して、周りを広く空けて、そこに来る人たちのために解放性を感じ取れるヒーリングスクエアを設けようと考えています。このプロジェクトと、ツインのエンジェルリングという摩天楼で浮遊する透明性のある二〇〇〇年以降の建築を考えています。