アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
最初に紹介する作品は「静岡県コンベンションアーツセンター・グランシップ」です。建築が磯崎新さんで、構造設計を私の事務所と私の恩師の木村俊彦先生で担当しました。高さは、高層棟が六十メートル、低層棟が三十メートルです。高層棟と低層棟はエキスパンション・ジョイントによって建物のほぼ中央でつながっています。私は高層棟のほうを担当しました。
大ホールおよび国際会議場棟となっている高層棟の内部空間は、ゴシック的な考え方を私自身かなり強く感じながら構造デザインをしました。約六万平米あります。近々、『新建築』や『GA』など、いろんなところで発表されると思います。『施工』十一月号で、施工と同時に構造、建築概要なども若干触れられておりますので、もし興味があれば見ていただければと思います。
地上高さが約六十メートルで、幅が上で二十メートル、下で四十メートル弱という巨大な吹き抜け空間をどういう構造でやるかですが、全体のプランが偏平の楕円形をカットしたよにつくられ、断面方向が放物線で切られています。そういう放物線のラインが何重かあり、幾何学で全体のジオメトリーが組み立てられています。その中に、ホールもその一部として入っています。
特徴のある立体トラスによる空間骨組構造が展開されています。リズミカルに運続するこの立体トラスは比較的細めの銅管で組立てられていて、最大径が三十センチぐらいで構成されています。下から見ると上昇しながら律動する空間が実現されているのがわかります。当初イメージした空間ができたと思っています。
光の入れ方によっていろんな内部の表情が出てきてなかなか面白いです。トップライトを閉じることもでき、閉じたときに中の照明の色を変えたりして、イベントに対応していろんな変化が出せるようになっています。
基本設計のときには遮光ガラスが入ることになっていましたが、予算などの関係で変更になりました。それでも当初の、「現代のカテドラルをつくりたい」という磯崎さんの考えは実現できたと思います。非常に幻想的な空間ができています。
大ホールの舞台上部にはアルミニウム張りのコーンが上下に二つあります。上のコーンが約百トン、下のが五十トンぐらいあります。巨大な反射板が機械仕掛けで動くようになっています。最初に内部を想定した模型どおりに空間が実現されています。この空間をどういうかたちで有効に使っていくかというプログラムの運用の話が進んでいて、楽しみな建物です。
非常に繊細な鉄骨部材を形態原理に従って微細に構築することによって空間を軽く表現しています。今日のテーマと関連するところです。現代のテクノロジーで表現すると、過去の石造のゴシックがこのように変質していくわけです。技術によって空間のあり方も変質するけれども、そのメンタリティだけは継承していく。そういうようなことを意図した建物です。