アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
妹島和世さんとの作品で、岐阜の「国際情報科学芸術アカデミー・マルチメディア工房」です。千平米弱の小さい建物です。建築のほうは妹島さんの講演で説明があるかと思いますので省略しますが、三十メートル四方の不思議にカープした屋根がふわっと浮いてる屋根を妹島さんのほうでイメージされていました。トップライトを開けたりしながら、なおかつそういう曲面をつくるということでした。
ある統一的なものの見方はできないかと考案しました。ピッチがほぼ三十センチで、二十センチのデプスのリブプレートの上に六ミリの鉄板が溶按されて、連続的な屋根の要素を構成しています。一部鉄板がないところはリブだけになっていてガラスを使い光庭としています。墓本的にはサグラダ・ファミリアの下にHPシェルでできている付属小学校をヒントにしました。ワンウェイのジョイストを少しずつずらしながらやっていくと、完全に回転させればHPになるんですが、われわれが求めた曲面はHPではありませんので、片一方のカーブのほうを定規代わりにしてきちんと取っておいて、それを順次並べて連続面をつくることをやっています。溶接ですが、約二・四メートルぐらいの単位の運搬できるサイズのものを工場でつくっておいて、その間上面に一枚鉄板を入れて現場溶接でなめしていくと全体に滑らかな曲面ができます。非常にシンプルな方法で、複雑な曲面を合理的にコンストラクトしていくことを試みています。曲面の形態としては三辺は同一平面にあるんですが、一辺だけ湾曲して落ち込んでいます。正方形の板の一辺に大きな球をぐうっと入れて押し込んだような形態を、無理をせずにつくっているわけです。リブと鉄板の組み合わせという単純な組み合わせで、複雑なものに対応しています。
私はよくサットル・コンストラクションといっていますが、現代のテクノロジーによって精度のよいいろんなことができるようになってきています。それと同時にこういうものの製作も一貫していて、CADによる作成援用や、穴開け加工に対する精度、溶接の技術の向上など、ハードのほうも成熟してきています。そういうテクノロジーをベースとしてソフトやハードの技術の成果を十分に反映して設計できます。この作品ではそんなようなことを試みているわけです。
建物は岐阜県の発注です。一般にこの程度の規模ですとゼネコン大手五社へいく可能性が少なく、地元のゼネコンヘいくケースが多いです。ということは、ファブ(ファブリケーター)もいわゆる鉄建協のSクラスだとかHグレードなどという大工場ではなく比較的小さなファブヘいくことも予想されたので、どちらかというとローテクではあるけれどもシンプルに施工ができるようなディテールにすることによって、精度のよいものをつくることを設計段階で考えておきました。難しい仕事だったのですが、地元の鉄骨のファブが意気込みを感じてくれ、いろいろがんばってくれました。
造船技術を建設現場に持ち込んだわけですが、いろんな工夫をファブがやっていただいたお陰で実現できた屋根だと思います。