アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
遺跡を発掘、調査する際に、トレンチという方法があります。これは地面を碁盤の目のように切って掘り下げて、地層が場所によってどうなっているかを調べる方法です。どの時代に何があったかということをこの方法で調べるのです。
僕はこの空間を実際に体験し、とてもおもしろい空間だと感じました。そして、美術館も、このような空間でつくることができないかと考えたのです。上をトレンチと同じように碁盤の目状に切る。そうすると、土の凸凹ができます。その掘られた部分、トレンチの溝にあたる部分を美術館の空間として考えるのです。それに構造物を架けるわけですが、土が上向きに凸凹だとすれば、構造物は下向きに凸凹のものとし、それを架ければ、歯並びが悪い歯みたいに歯と歯の間に隙間ができます。この自動的に生まれる隙間の空間を美術館の展示室にでさないかと考えました。もちろん、上の構造体の中も空間がありますから、そこはホワイトキューブと呼ばれる、いわゆる白い箱の展示室をつくればいいと思いました。この方法を思いついたことで、この場所に建つということの意味、つまり縄文との関係が見えてきたように思いました。
基本的に平面は市松模様になっています。チェッカーボード模様ですね。なぜそれを基本バターンとしたのかというと、歩くという体験を通して考えてみたからです。断面図が指し示しているのは、構造体の中のホワイトキューブから出たら、次は土の空間に移動するというように、土の空間とホワイトキューブの空間を交互に体験できるということです。この考え方はもともと断面のアイデアであったものを平面上のアイデアに接続するものです。横の移動、縦の移動を通して交互に空間を体験するならば市松模様がいいだろうという結論となったのです。ただ、展示室には要求される規模や必要な数がありますので、市松模様には向かないところもありますから、そういったところでは基本の市松模様を少しずつ変更して計画を整えていきました。
先述したように上の構造体と下のトレンチは、噛み合わせの悪い歯のように、最初からぴったり合うようにつくっているわけではありません。場所によっては横に長い隙間ができたり、縦に長い隙間ができたりします。そのさまざまなサイズやプロポーションをもった隙間をどのようにつくっていくかということを、模型をもとにしながらスタディしていきました。ですから、土とホワイトキューブという、素材のうえでも性格の異なったいろいろな空間が展開するようなつくり方をしています。