アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
土をトレンチと同じように碁盤目状に切るといっても、防水などの技術の問題もありますし、実際、土をそのまま切ったようにはできません。そのため、床にはタタキ(三和土)、壁には版築という方法を使おうと考えています。
タタキは、日本をはじめとして土があるところでは使われてきた構法で、昔はどの民家にも見られたものです。土と生石灰、場合によってはにがりを混ぜてつくるものです。土の中のある成分が生石灰と反応して固くなるということを利用した構法です。今は生石灰よりもセメントが使われることが多くなりました。セメントを入れると、より強度が増しますので、そのようなつくり方に代わってきたのです。コンクリートという素材が一般的に使われるようになるまでは、どこの国でも土と生石灰を混ぜていたのです。
床ですから、そこに作品を置くことを想定しなければなりません。作品そのものの重量もさることながら、重機を使った作品展示なども考える必要がありますから、コンクリートと同程度というのは難しいでしょうが、それに近い強度、重量に耐える力が必要になってきます。それも成分によりますので、どういった土を使い、それに何をどのくらい混ぜたらいいかなどについて現在、調査検討を進めています。
一方、版築は、中国で今も一般的に使われている構法ですし、日本でも法隆寺の壁などに見ることができます。でされば青森の土を使いたかったので、敷地の近くの、ある程度の量が採掘でさる土の産地を調べ、その中でここの土がいいだろうという場所を探しました。つくり方は、単に木枠に土を押し込んで、固めて重ねるというものです。コンクリートをつくる作業に似たものといえるでしょう。
土とはいっても壁ですから、そこには絵を架けるため釘を打ったりもしますので、そのための強度を調べたりもしました。また、崩れたり穴が開いたりしたときのために、補修の方法も検討しています。さらに、外気に面した部分にもこの版築を使いたいと思っていますので、水を吸ったらどうなるか、そしてその水が凍ったときにはどうなるかといったことに関しても、現地で実験を繰り返しています。
土を内装に使うことの利点のひとつは、高い調湿能力にあります。耳かき一杯ほどの土でも粒子の表面積の合計はテニスコートー面ほどにもなりますので、表面積に比例する調湿能力は、当然、高くなるわけです。また、どういう粒子の大ささの土を組み合わせるかで調湿能力も異なってくるので、55パーセント程度という美術館に適した湿度を保つことができるような土の組み合わせ、バランスを検討しています。普通、美術館では、白い壁と木の床とか、ニュートラルな空間がいいとされてきましたがら、今回のように土を使うというのは特別なことなのです。