アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
Yという住宅のお施主さんは、ご夫妻と旦那さんのお母さんです。旦那さんからの要求は、エレキベースの音を出せる空間がほしいということと、寝るときに音がすると寝れないので静かな寝室がほしいということでした。地下室で寝るのでもいいですか、と聞いてみると、それでもいいといいます。逆に奥さんは地下は嫌いだと、明るい部屋がいいといいます。ふたりが共通して思っていることは外部空間がほしい、テラスがほしいということで、でもテラスやベランダは外から見られたくない、という要求がありました。それであれば、地下もある屋上庭園もある住宅をつくればいいと考えました。地下10メートルから地上11メートルまで法規的な制限をめいっぱい使おう。そして、場合によっては、中間がなくてもいいんじやないか、と思ったのです。そこからこの計画は始まりました。
どんな形態が考えられるか、検討を始めました。するとだいたいがストーンヘンジみたいになってしまいます。足が二本にはしたくないが、一本にすると構造的にはどうだろうかとか、そんなことが議論されました。そんな検討を通して、いちばん何だかわからない形に決まりました。何も意図を発生していない形だからいいと思ったのです。その後、日影などの問題から若干高さを変えたりはしましたが、ほぼそのまま進んでいます。地下の部分と上の部分とそれを支えているものがある。途中に木造の普通のものがある。コンクリートの建物に中間の木造部分が増築されたようにも見えるし、木造の既存家屋の上部にコンクリートの建物を増築したようにも見える、そのどちらに見えてもおかしくないバランスを保つよう設計を進めました。
iという住宅が外断熱をしてうまくいったので、ここでも外断熱を試みています。外断熱というのは中に部屋がないところにやっても意味がありませんが、中に部屋があるところとないところの境界で断熱するしないをきっちり区切ってしまってはいけません。外部の熱の影響を避けるためには、境界より部屋がない壁面側に一メートル程度余計に断熱することが必要であるといわれています。外装はこのルールを律儀に守ってできています。ですから、断熱すべき場所に張ったステンレスシートのパターンを決定するものは、そのルールであり、プランであり、視覚的に意図されたデザインではないのです。
また、このコンクリートの建物には窓がありません。外からは見えないようにという要望に応えることと、住宅らしさを避けるという理由で窓は止めにしました。ただ、部分的に穴が開いていて風は通るようになっていますし、トップライトはあります。窓がない代わりに、空がいろいろ見えるということにしたのです。わざわざ最上階に部屋があるのに景色を見るんじやなくて空を見る、そのためにはどういうトップライトの開け方をするべきなのかを考えました。