アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
このような発想は、この美術館に対してだけでなく、ここ数年、ずっと思い続けてきたことです。Lという住宅、これも同じような原理に基づいています。
この家は、僕の弟の家です。身近な人の住宅を設計することがはじめてだったこともあって、どうつくるか、とても悩みました。ご覧の通り、家には見えないんじやないかと思います。既存の石恒の上にコンクリートの箱がただ置かれたように見えたらいいな、という気待ちでつくりました。コンクリートの箱といっても抽象的なボックスをつくりたいというのではありません。何か違うことのためにつくられた空間、工場でも養鶏場でも何でもいいのですが、ある目的のためにしっかりつくられたけれど、その用途がなくなってしまった。でも、その空間がとてもよくできていたので住宅に利用してみた、というような感じでつくりたい、といった「倒錯」したつくりかたをしています。
手摺りにしても、たまたまあった鉄骨をそのまま使っている、という感じにしています。人が住むわけですから網戸が必要ですが、綱戸はどうしても住宅らしさを演出してしまいますので、ここでは目の細かいスアンレスのメッシュを使いました。工業用のフイルターをつくっているメーカーと相談して、コンクリートの箱と同じ質をもった材料を用いたのです。このように、もともとあったものを利用しているという考え方で建築をつくっていますので、排気口なども必要なところにつくってはいますが、開けた穴をわざわざ隠して、その機能が表立って見えないようにしました。コンクリートに関しても普通型枠という、本来は下地をつくる型枠で打っています。ただ、打放し型枠でつくった方が本当は楽ですし、お全もかかりません。どうってことなく見えるようにつくるというのは、意外にたいへんなことだと思いました。
中に入り階段を上りますと、水平に隙間ができていることに気づきます。上の部屋が上から垂れ下がっているというよりは、あるところでは天井が高く、あるところではそれが折れ曲がり低くなっている、という感じにしています。これも、このような空間を最初から意図してつくろうとしたのではなく、何か別のことをした結果、できてしまったというような感じにつくりたかったのです。本当はそうではないのですが、結果としての産物に見せたかったのです。
このような隙間をつくりますと子どもは遊びます。しかし、子どもが遊んで楽しいように、隙間をつくったわけではありません。たまたまできた隙間を、なぜか子どもは面白いと感じて、そこを遊び場としてしまったのです。こういうところに原っぱ的なことが少し実現できているのかなと思っています。
中は、すべて白くしました。別の用途だったものを、住まいとするために塗り替えたという感じを出したかったからです。ただ、白といってもいろいろな白を使っています。光沢のあるもの、ないもの、さわるとぐにゃっとするような白、いろいろです。