アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
美術作品には大きく二種類あります。ひとつはポータブル、つまり持ち運びが可能なものであり、もうひとつは、その場所だからでさる、あるいはその場所でしかできないものです。前者は作品が空間をつくるというもので、後者は空間が作品をつくるというものです。前者をオートノマスな作品というのに対して、後者はサイトスペシフィックな作品といわれます。大きくいえば作品が先か空間が先かということで、このことは繰り返し議論されてきました。
ホワイトキューブの空間は、作品が空間をつくるという場合に対応しやすいものです。逆にいえば、ホワイトキューブの空間から、何らかの作品が生まれるといったことはあまりないといえるでしょう。土の空間はポータブルな作品には向きません。ただし、青森という場所性、遺跡の隣という立地案件を意識した作品や、この空間を積極的に使って何かをやってやろうという作家、この空間から触発されたことをもとに出来上がった作品には向いているといえるでしょう。普通はこの二種類の作品に対して、ホワイトキューブの空間ひとつで対応しようとします。そうしますとどうしても中途半端にならざるを得ません。そうしないためには、最初から空間も二種類用意すべきなのです。
栃木の大谷石採石現場を例に考えてみましょう。一般の建築でも採石現場でも、空間がある面積を超えれば、その空間を支えるために柱が必要となります。しかし、採石現場の柱は、最初から意図してできたものではありません。大谷石を採石する際に残した部分を、上部が崩れないように柱状とにしておいただけのものです。つまり、石を取るという作業を優先して行った結果であって、一般の建築のように、最初からそうなるべく意図された空間ではありません。
大谷石の採石場は、美術の展示やファッションショーにも使われています。ここで展覧会をやってみようという気持ちにさせられる作家は多いようです。何で多いのか、この問いは僕の長年の謎だったのですが、その答えとして、ひとついえるかなと思っていることは、何がそこでやってみようと思い起こさせるためには、その場所が、こういうことして下さいよと最初から決められているような空間であってはいけない、ということです。美術の展示をしてもらおうなどという意図がまったくない場所、実はそういう空間の方が、人はそこで何かを展示してやろうという気になるのです。空間に従属するのではなく、空間と対等な関係になるためには、最初から明解な目的とか意図があってはだめなのです。