アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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山本理顕 - システムズ・ストラクチュア
コミュニケーションを誘発するデザイン [埼玉県立大学]
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東西アスファルト事業協同組合講演会

システムズ・ストラクチュア

山本理顕RIKEN YAMAMOTO


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コミュニケーションを誘発するデザイン
埼玉県立大学
迷路のような一階、正面に人型のアートワークが見える
迷路のような一階、正面に人型のアートワークが見える
大学棟のメディア・ギャラリーを二階レベルより見る
大学棟のメディア・ギャラリーを二階レベルより見る
講堂の内部より屋上庭園方向を見る
講堂の内部より屋上庭園方向を見る

「埼玉県立大学」は福祉と看護のための大学です。敷地面積が約10万平方メートルと割合広く、周辺が住宅地だったために、なるべく低い建物を敷地いっぱいに建てようと思い、長さ約300メートルほどのリニアな建物をふたつ、敷地の市側と北側に配しました。北側が大学棟、南側が短大棟です。ふたつの棟の間には、図書館や実験・実習室が設けられていますが、その屋上は芝生とウッドデッキからなる庭園です。

屋上庭園に散在するガラスのボックスは、一階の実験・実習室のための機械置き場です。スクラバーという消臭装置や空気を浄化する装置、殺菌する装置や空調機など、用途に応じてさまざまな種類の機械類が必要になりますので、それを屋上に出し、ガラスで囲いました。

大学棟と短大棟の間に設けられた屋上庭園と大講義室を見る
埼玉県立大学 屋上庭園と大講義室を見る

リニアな棟から屋上庭園側に張り出している部分は大講義室です。大学本部や大講堂、食堂が入る棟は、大学棟、短大棟とは別に敷地東側に設け、そうした機能によってフォーラムという広場ができあがっています。また、体育館およぴグラウンドは短大棟の南側に設けました。

一階は迷路のような構成になっていますので、自分の位置を認識するための案内のサインが欠かせません。人型のアートワークは舟橋全二さん、サイン計画は廣村正彰さん、家具は近藤康夫さんなどにお願いしました。こういったところでもデザイナーやアーティストとのコラボレーションが実現しています。大学棟、短大棟の一階には実験・実習室が、二階には講義室が、三、四階には研究室が設けられていますが、これらの施設をつなぐのが四層吹抜けのメディア・ギャラリーです。ここはガラスで囲まれていますので、この空間を巨大な空気循環装置に使えないかと考えました。そのまま空調するのでは大変なエネルギー・ロスになりますが、逆にこの熱環境をバッシブ・ソーラー・システムとしてプラスに転換できないかと考えたのです。天井には梁背約2メートルほどのフィーレンデールトラスがありますが、この上部と下部にガラスを貼ることで空気溜まりを設け、冬場はここで暖められた空気を一階床下から吹き出すようにしました。また、夏はこの空気溜まりのダンパーを開放することで、室内の熱気を積極的に外部に排出するとともに、敷地内に給気塔を設け、そこから取り入れ地下を経由した新鮮空気が一階床下から供給されるようになっています。このシステムによって、夏場は体感温度が2〜3度ほど下がります。

ガラス張りのダクトスペースには、飛散防止フィルムを貼っていますが、このシールにはドット状のミラーが印刷されていますので、半分は中が見え、半分は外部を映します。このダクトスペースが、上の温かい空気を下に下ろしてくるスペースにもなっています。同時に、このダクトスペースの裏には横方向の荷重を受けるコアが設けられています。三、四階の研究室は空調していますが、そのリターンはメディア・ギャラリー側に逃がすようになっています。ですから先生がたくさんいるときは、メディア・ギャラリーも冷やされ、夏体みのようにあまり先生がいないときは、メディア・ギャラリーも冷えすぎないという合理的な仕組みになっています。

講堂の客席は、屋上庭園側を向いています。また、この講堂のステージとフォーラムとは同じレベルになっていますので、ステージ背後のガラス壁をウインチで開放すると、ステージとフォーラムを一体として使うことができます。また、逆にフォーラムをステージに中庭の斜面を客席に、講堂を楽屋として使うことも可能です。

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