アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
「広島市西消防署」は一昨年竣工した建物です。広島の平和大通りに面して建っている、消防署と救急救命士の養成学校の建築です。外壁にはガラスのルーバーを用いることで、中の活動がよく見えるようになっています。建物中央に設けられたアトリウムは消防士の訓練に使われます。不測の事故に備えているわけですがら、24時間、消防士の人たちはそこにいるわけですよね。その24時間彼らがいるということが、いわば周辺の人たちに対する安心感のようなものになっていると思うんです。ですから、まわりに対して見えているということが、防災に対する啓蒙活動になるだろうと考えたのです。
ここで難しかったことは、構造システムです。一階には消防車がずらっと並びますから、そこにむやみに柱を立てるわけにはいきません。そこでフィーレンデールトラスを用い、かつ三階部分を利用してトラス階をつくったのです。これがいわば人口地盤の役目を果たすことで柱の少ない空間を実現することができました。基本スパンは3.8メートル×3.45メートルのグリットで、柱梁の断面寸法は300×300ミリ、外周部だけは250×250ミリのH型鋼としました。また、これは耐火建築ですので、FR鋼と耐火塗料を用いて耐火性能を確保しています。さらに四隅に構造壁を配置して、横方向の力に備えました。
外側がら赤く見えるところには、水回りや倉庫など外からあまり見られても困るようなものが入っています。
四階には、一般の人が入って来られるようなギャラリーを設けました。展示ロビーと呼んでいます。ここには、消防活動に使うものや古い防火衣やへルメットなどが展示されていますが、それらは床に展示されているのです。展示物を収め、強化ガラスを載せ、その上に滑り止めのガラスを載せました。金平糖のような突起がガラスの表面がら出ていて、滑らないようになっています。幼椎園の子どもたちがしょっちゆう見学にきますし、ここからは中央のアトリウムでの訓練も見ることができます。
署長室もガラス張りになっています。この部屋にはブラインドも入っているのですが、署長さんは見られるのが仕事なのだがらといって、絶対にブラインドを下ろしません。
廊下部分は50パーセント程度の開口率を確保し、屋外扱いとしました。ここが屋外廊下として認められているために、避難経路の計画がうまくいっています。
講堂は、可動床としました。市民の方がたくさん集まることなども想定されましたし、講義室として使うことも考えられました。要するに平土間としても階設教室としても使いたいということで、可動床としたのです。最初は体育館などでよく使う壁に収納される階段状の椅子を使おうと考えていたのですが、これは収納部分を大きくとってしまいますので、長方形の床の一辺をピン接合とし、その反対側をウィンチで上下させるような形の可動床としたのです。