アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

マークアップリンク
トップ
私の建築手法
青木 淳 - 最近の仕事
ルイ・ヴィトン表参道ビル[住宅スケールから始まる街/小さなスケールが集合する]
2017
2016
2015
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986

東西アスファルト事業協同組合講演会

最近の仕事

青木 淳JUN AOKI


«前のページへ最初のページへ次のページへ»
ルイ・ヴィトン表参道ビル
住宅スケールから始まる街
配置 縮尺1/4,000
配置 縮尺1/4,000

名古屋、銀座に続くルイ・ヴィトンの仕事で、コンペで選ばれました。

敷地は、同潤会アパートの向かい。名古屋や銀座とはずいぶん違う立地条件です。同潤会アパートがあることからもわかる通り、もともとこの地域は住宅地でした。お店がたくさんあって、商業的に成功しているこの地域は、都心に近い、良質な住宅地としてスタートしたのです。そのせいか、参道には並木が育ち、通りを一本中に入ると、まだ戸建て住宅があって、そこには人が住んでいます。

この同潤会アパートは、もうすぐ取り壊されます。僕は、このことで、同潤会が建っているところだけでなく、この街全体に取り返しのつかない打撃を与えてしまうだろうと思っています。表参道が表参道足り得るのは、この同潤会のアパートがあるおかげで、それによってこの街がほかの街とすごく違うことになっているんじゃないかと思うのです。

この表参道には、路面商、つまり歩道にものを並べて売っている人たちがたくさんいます。たぶん、それが一番小さい商売でしょう。もう少し大きくなると住宅を改装して、そこでお店を始めます。そして、それがうまくいくと、住宅を壊して小さい建物をつくります。という具合に、大きいビジネスが急に進出するというより、小さいことから始まって、それがだんだんと大きい仕事になっていくよさが、表参道にはあると思います。小さな喫茶店のオーナーの人に聞いてみると、お客さんがどんな人か、何に満足して、何に不満かというのを見て、これからどうやってお店をよくしていこうかを考えるといいます。そのうえで、もう一軒お店をつくろうか、方針を変えようか、という動きがある。そういう土地に、ルイ・ヴィトンという、ここから始まったわけではない、国際的な商業のための建物をつくることになりました。

小さなスケールが集合する
四つの異なる柄のトランクが積み重なるような構成
四つの異なる柄のトランクが積み重なるような構成

ルイ・ヴィトンの建物をつくるわけですから、その要望や意向を考慮して建物をつくりますが、建物をつくることによって、もともとよかった街がもっとよくなるようにしないと、結局、自分で自分の首を絞めることになります。幸いルイ・ヴィトンは、スタンダードをつくって、どこにでも同じものを建てるようなブランドではありません。

場所が違えば違うデザインの建物ができていくのは当然であるという考え方のブランドですので、この表参道という街に対してどういうふうにつくれるかがコンペの主旨になりました。

具体的にいえば、この街の特徴のひとつである、住宅特有の小さなスケールをどう表現するかということです。本来、ブランドの建物は、実際よりも大きく見せるべきなのかもしれませんが、表参道では逆に、小さなスケールに見せるという必要があるのです。ということで最初に考えたのは、小さな直方体を積み重ねるというものです。

ルイ・ヴィトンの人には、トランクを積んであるような建物なんだという説明をして、理解してもらいました。トランクを積むということ自体が重要ではなく、ここに小さなスケールの建物が集まってできる建物ができたらいいと思ったのです。最初につくった模型の、トランクひとつひとつには、ルイ・ヴィトンがバックなどに使う四つの柄を別々にくっつけて、全体を構成したのです。

トランクを立体的に積み重ねていくので、途中に隙間ができたり、途中にレベル差ができたりします。そのため、お店の内部が、必ずしも大空間ではなくて、ある適切であろうスケールやプロポーションの小さな単位に分かれるのです。ルイ・ヴィトンが店舗としての必要なスケールがいくつかありますので、それに沿ってひとつひとつの単位を考え、それを積み重ねてスタディをしました。

一方で、歩いてお店全体がまわれるようにしたいということもありました。敷地の面積から考えると、恐らく四層くらい使わないと必要とされる面積にならないので、地下一階から三階までがお店になると考えられていました。しかし、それでもなお、エレベータなりエスカレータなりを主動線にせずに、体力的にも心理的にもスムーズにまわれるようにしたい。そのことにも、小さな単位を立体的に積み重ねるということは有効でした。ひとつの単位とひとつの単位が一種のスキップフロアのように連続することで、一番上まで気持ちよく行けるのです。

«前のページへ最初のページへ次のページへ»