アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
Uという住宅は、Yよりも少し前に計画されたプロジェクトで、実際につくるつもりではなく考えたものです。
この住宅は、いってみればふたつの世界をもっている住宅です。片方の世界は、道路と一体化しているような、どちらかというとパブリックな空間です。そして、もう片方は裏の庭と一体化しているような、どちらかというとプライベートな空間です。そのふたつの空間がひとつの住宅の中で、どちらが優位ということではなく、お互いに拮抗するようなつくり方はないだろうか、とスタディをしたものです。道路側から見た時に主と見える空間と、裏から見ると主に見える空間が、どこかで反転するような住宅を考えました。
ここでは、スロープが道路側の空間と庭側の空間をつないでいます。そこでは、道路から入り、スロープを下がっていき、途中で折り返して地下に入るというような経験をします。つまり、最初、道路側の空間に入ったつもりが、くるっとまわっていくと、いつの間にか庭側の空間になってしまうのです。比喩的にいうとメビウスの輪みたいなもので、表だと思っていたところが、いつのまにか裏に変わっている。そういうことが、ふたつの空間の間で生まれるといいなと思ったのです。メビウスの輪でなくて、クラインの壷かな。そういうような構成を考えました。