アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

マークアップリンク
トップ
私の建築手法
青木 淳 - 最近の仕事
2022
2021
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986

東西アスファルト事業協同組合講演会

最近の仕事

青木 淳JUN AOKI


«前のページへ最初のページへ次のページへ»
六角形をベースとした架構。辺の中央に柱が立つ
六角形をベースとした架構。辺の中央に柱が立つ
梁になる部分の形状を変えることでさまざまなかたちができる
梁になる部分の形状を変えることでさまざまなかたちができる

トマトをおいしくつくるためには、あまり水をやってはいけません。トマトの原産地であるアンデス地方にはあまり雨が降りません。そうするとトマトの根っこが、土の中の養分を強い力で吸い上げて、それがトマトに蓄えられ、糖度が上がるのです。普通のトマトは水に浮かびますが、そうやってつくったトマトは水に沈みます。実際に食べてみましたが、確かにおいしかったです。

そういうトマトのようなつくり方をした野菜を売るための施設を計画しています。売るというよりも、むしろどうつくっていっているのかを展示をするという施設です。しかも、これは仮設建築物で、更新はできると思いますが、一年間やって、また別の場所にもっていくキャラバンみたいな計画です。僕は今まで、敷地など、既存部を頼りにしてものをつくってきましたから、このように持ち運びする仮設建築物はやったことがなく、できるかなと、少し悩みました。

野菜を育てるわけですから、屋根は透明。本当は90パーセントくらいの透過率が必要ですが、展示のためのスペースでもあり80パーセントにしました。また、風通しがよくないといけないので、側面は基本的には覆わず場所によって視線を遮ることだけをしました。

敷地が変わりますから、屋根を仮設的にどうつくるかという仕組みを考えることになります。覆い方の問題になるかと思いますが、三角形でも、四角形でも、六角形でも覆うことができます。たまたま、ここでは六角形をベースに計画を始めました。

六角形の面を支える柱を考える時、辺と辺のぶつかるところに柱を立てるのが一般的かと思いますが、ここでは、辺の中央に柱を立てることを考えました。そうすると、柱とふたつの「人」字型の梁でひとつのピースができ、それを並べていくと面がつくれるのです。ですから、柱と梁があるのではなくて、ひとつのピースが連続することで梁になる、そういう仕組みをもっています。

架構を構成するエレメントは運搬可能な大きさになっている
架構を構成するエレメントは運搬可能な大きさになっている

そのピースの形状を変えることで、花のようなものもできますし、星のようなものもできます。円盤が浮いたようなものにもできれば、葉っぱに覆われたような空間だってできるのです。同じ仕組みですが、さまざまなかたちができるのです。遮蔽率さえきちんと考えておけば、だめなものはありません。どれにしようかいろいろやってみて、選んだものが、意外に単純な図Aです。これであれば80パーセント以上の遮蔽率になりますし、開いている部分に張る膜や、施工費のことなども考え、これにしました。

そのピースの形状を変えることで、花のようなものもできますし、星のようなものもできます。円盤が浮いたようなものにもできれば、葉っぱに覆われたような空間だってできるのです。同じ仕組みですが、さまざまなかたちができるのです。遮蔽率さえきちんと考えておけば、だめなものはありません。どれにしようかいろいろやってみて、選んだものが、意外に単純な図Aです。これであれば80パーセント以上の遮蔽率になりますし、開いている部分に張る膜や、施工費のことなども考え、これにしました。

仮設ですから、組み立てや撤去が容易でなくてはなりません。ですから、そのパーツをトラックに積める大きさにして、運べるようにしました。光を透過するところには、テフロン膜が張ってあります。実際には、フィルムが二重になっていて、扇風機で空気を常に送り込み、膨らます仕組みになっています。その構造体の上部は樋状になっていて、水をコントロールするほか、遮光のスクリーンが入っていて、光もコントロールできるようになっています。

普通の仮設とだいぶ違って見えるのは、柱と梁があって、それが組み合わされているのではなく、一個のもの自体は、柱梁という意味をもたない単純なエレメントに過ぎないからだと思います。連続することでようやく構造的に成立する。だからこういうエッジの部分はキャンティレバーになるわけですが、そのことによっ て敷地の形状や、既存の樹木を残さなければいけないといった条件に対応することができるのです。また、エッジの処理だけではなくて、部分的にその仮設が内部分もつくることができるのです。

このプロジェクトは、ほかの仕事とつながりがあるようには思いません。ただ、敷地など、よりどころとなる既存のものがないところで、ジョイントの仕方とエレメントを決めるだけのことが、結果としてどのような特性を生み出すかに興味があって、やってみた仕事です。

遮蔽率やコストなどを考慮して最終的に選ばれた形状(図A)
遮蔽率やコストなどを考慮して最終的に選ばれた形状(図A)
模型。パーツの組合せ方次第でさまざまな敷地形状に対応できる
模型。パーツの組合せ方次第でさまざまな敷地形状に対応できる
«前のページへ最初のページへ次のページへ»