アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
この建物は、小さな単位、つまり箱のようなものをランダムに立体的に積み重ねるという構成のため、単純に階が重なっていく建物とは違い、下から上まで真っすぐ通る柱がかなり少なくなります。大半が立体的あみだくじ状態になっていくのです。そうすると、普通のフレームの構造というよりも、全体で全体が支えられているような、ヒエラルキーがあまりない構造形式になります。
そういう話を、構造設計家の佐々木睦朗さんに相談したら、それはすごく面白いからやってみたいということで、この計画はスタートしました。
本来、箱と箱を積んでいくことをそのままやろうとすれば、一個の箱に骨があって、もう一個の箱に骨があって、それを積み重ねるという方法が一般的かと思います。しかし、この場合、重なる部分で構造が二重になり、無駄が生じてしまいます。
そこで、箱自体を構造にするのではなく、箱と箱の間の隙間、いわばスペーサーを構造にすることを考えました。それによって構造は面的になり、箱はその面によって定義されます。また、箱と箱をつなぐということがありましたので、ブレースや壁などを用いず、柱梁の格子で面をつくっていきました。箱と箱の隙間の幅は、まちまちですと扱いにくいので同じにしました。その結果、柱梁のディメンションが同じになり、H−200のH鋼だけでつくることになりました。もちろん、普通のH鋼だけでは耐震壁が取れないところが出てきますので、ビルドHを使うとか、梁で足りないところは鉄板で補強したりしています。ただ、基本的には、全部同じ大きさにして、バランスをとっていくことになりました。
箱を積み重ねるというところから始まってはいますが、考えていくと、箱がはまるであろうフレーム、つまりスペーサーの部分が先に定義され、それに対して箱がはまっていくことになったのです。チョコレートの箱でいえば、仕切り部分が構造体で、チョコレートが箱です。チョコレートをラッピングしてある紙にあたるのが、鏡面パネルです。つまり、この時点では、箱を積み重ねていくというより、チョコレートの箱をつくっているような意識でした。
最終的に出来上がった外観を見ても、トランクが積み重なっていると見る人は、まずいないのではないでしょうか。実際、そう見えるということが僕にとっては重要なことではなくて、小さいスケールの単位が集まってできているということと、それぞれの面がホモジニアスに見えるということの方が重要でした。立面的に凹凸がなく、ひとつの面にも分割されているようにも見える微妙なところでできています。この建物に限ったことではありませんが、建物は実在するひとつの構造物にすぎませんから、その構造物にすぎないものであえてほかの何かを表現しなくともよいと思っています。