アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
最近は学校の設計の仕事が多いのですが、僕は学校に限らず、建築設計ではアクティビティをどう組み立てていくかが大切だと思っています。ブリューゲルの「子どもの遊び」という絵があります。大勢の子どもが場所ごとに違うことをやって遊んでいる情景で、細かく見ていくとなかなか見終わらないような絵です。小学校はこのような状態になっているのがいちばんいいと思っています。先生に統率力があって、クラスの子どもが全員ピシッと前を向いて授業しているのは、あまりいい風景ではないと思います。とくにオープンスクールのチームティーチングでは、子どもが自分でやる気を出すことをサポートするのが先生の役割です。建築の教育でいうと、設計製図の時間にエスキースを見ることはまさにそういうことで、全員を相手に原理を教えるというやり方ではうまくいかないのと同じです。
千葉市立打瀬小学校の設計時には、アクティビティのシミュレーションをやりました。入学式を体育館をやった後、最初のクラスから先生が先頭になって教室に入っていくというシーンです。クラス単位でゾロゾロと歩いていくというのは従来の学校計画で、集団のアクティビティをベースにして廊下の幅などいろいろなことが決められていきます。でも、そうしてしまうとブリューゲルの絵のような状態にはなりません。
一方で、朝、子どもたちが学校にきて、先生がくるまでどこに散らばっているかの調査も行いました。校門のない学校では、子どもたちはいろいろなところからバラバラとやってきて、靴を履き替えて、オープンスペースに行って、まずは鞄を置きます。
先生がくるまでは、大きなテーブルがあればそこに溜まっていたり、仲のよい子ども同士が集まったり、待ち合わせて入ってきたり、300人の子どもの動きそれぞれに全部意味があります。この動きをコンピュータ上に手作業でプロットし、その動きを調べています。授業をやっている時もこれと同じように、どこが教室だかわからない状態になっているのがいいのではないかと考えました。
建築を設計すると、建築がどうしても人の動きを決めてしまいます。でも僕は、そこにいる人間がどういう表情をしてそこに集まっているかということが、学校の空気をつくると思って設計しています。当たり前のことですが、いい学校は校舎が立派ではなくて、子どもたちが活き活きしている学校だと思います。この小学校だけはC+Aではなく、シーラカンスの仕事です。