アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
宮城県迫桜高等学校は、敷地が120メートル角、二階建てで、延床面積が約2万平方メートル弱あります。寒冷地なのでOMソーラーにして、太陽熱を利用しています。集熱屋根面積では、世界でも最大規模のもののひとつだと思います。
ここでは「黒」と「白」のお話をします。「スペースブロック」や「黒/白」も、建築を考える時の原理を僕自身の中でクリアにするためのものです。学校の設計では多くの人との打合せが必要になりますが、どのような意見に対しても明確な答えを出せるような軸がないと新しい提案は伝わりません。
「黒」は部屋名と使われ方が一対一で対応しているもので、倉庫、トイレ、理科室とか、住宅の個室や玄関のような空間です。「白」は使われ方によって呼び方が変わる空間です。社員食堂も時に講演会場になるなら「白」です。迫桜高等学校の場合だと、体育館は昇降口の後側にあって大玄関ホールにもなりますし、行事もそこでやるので「白」です。住宅でも学校の設計でも、みんなすぐにプランや面積表を見たがります。その用途の部屋があってかつ面積も広ければ、それをいい設計と思うのは当たり前かもしれません。しかし、プランのすべてが黒であると、ひとつの用途にしか使えないわけですから、使っていない時間も多く、もったいないともいえるのです。
迫桜高等学校では、おおよそ「黒」と「白」が一対一になるようにしています。あまり使っていない教室をくっつけて、余ったところを白い場所、フレキシブル・ラーニング・エリア(以下FLA)と呼んでいます。
使用する時間の短い特別教室をやめて、廊下を広げ、さまざまな用途に使うことのできるスペースに置き換えたわけです。単位制高校なので五、六人の授業もたくさんあって、そういう時には大きいテーブルを使って大学のゼミのような授業をやってくれています。このFLAは内法で6メートルほどの空間で、お弁当を食べる場所にもなりますし、コンピュータのジャックもついているので空き時間に自分でパソコンを広げたりすることもできます。このように、いろいろなことができる場所をつくっていかないと、建物は一見合理的でもすごく窮屈になってしまいます。用途が変わると、増改築するしかなくなるようでは困ると思っています。
一般教室や実験室は「黒」の空間ですが、内装としては意図的に明るく白くつくりました。ここでは行為を選択することはできません。先生の方を向いていないといけない、いわば行為を強制される空間ですから、明るくて快適なほうがいいと考えたのです。FLAの空間は、自分が何をするか選んで動いている場所なので、それほど白くしなくて構わないのです。「黒」と「白」といういい方をしましたが、内部の仕上げに関しては逆になっていることが多いですね。中庭もFLAと同じようにベンチを置いています。外部空間に家具がないと地べたに座るしかなくなるので、うまく使われません。ですから家具を入れるようにしています。家具のデザインは黒川勉さんです。
吉備高原小学校の設計をする時には、地面に家具をどう並べるかということから考え始めて、そのまわりに壁や「白」のスぺ−スの準備室やトイレなどを入れていくという順でつくっていきました。敷地が広かったので、公園のようなところに教室がつくれたらいいという考え方です。今は樹木も育ち竣工当時とはだいぶ表情が変わってきました。内部は流動的な空間で、どこで写真を撮ってもいろんな種類のイスやテーブルが同時に見えます。図書室は床座とイス座が共存しています。