アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
2004年に設計した賃貸アパートで、場所は千葉県船橋市です。各住戸は25平方メートルから30平方メートルぐらいの床面積で、ミニキッチンとユニットバスが付いている、いわゆるワンルームマンションです。
ワンルームマンションはキッチンやユニットバスを最小限の大きさにして居室部分を大きくするのが通常ですが、実際にはそれほど大きくはなりません。また、居室はベッドや洋服などが密集するような感じになり、ユニットバスも狭くて窓がなく、できれば長居したくない空間になっています。キッチンにしても楽しく調理ができるということからはほど遠い、とりあえずあればよいというだけのものになっている感じです。
そこで僕は、スリールームという提案をしました。スリールームはお風呂と、ベッド回りと、キッチン回りの三部屋を同じ大きさにするというものです。お風呂とミニキッチンを大きくしてベッドの部屋を極小にする、とも言えます。僕らの持ち物というのは大きく分けて、キッチン回りのもの、お風呂回りのもの、ベッド回りのものの三つに大別できるのではないかと考えました。キッチン回りのものはケチャップ・食器・残飯・生ゴミ・爪楊枝・スプーンなど。お風呂回りのものは歯ブラシ・洗濯機。ベッド回りのものは洋服・マンガ・テレビといったものです。それらをその三部屋に分配していくのがよいのではないかという提案です。ただこれは原則に過ぎないので、テレビをどこに置くかなどはその人次第です。
敷地の南側には大きな建物があるので、片廊下型ではなく階段室型にして、開口部も南側のみならず東西南北それぞれに設けると共に、トップライトも設けました。北側片廊下にすると同じ平面が並ぶハーモニカ型になってしまうので、階段室型にすることによっていろいろな大きさや形の平面をつくりたいと考えました。
ランダムに線を縦横に引いて、細い部屋、大きい部屋をつくることで、いろいろな3部屋が得られるというアイディアです。お風呂はお風呂にしては大きいというものになります。ただ機能を超えて大きい部屋をつくることで、そこに棚や植物を置いたりする人が現れるのではないかと期待しました。
音の問題でコンクリート壁式構造を求められました。壁式構造は暗くなりがちなので、ここでも窓を大きく取ることを考えました。天井高を可能な限り高く取って、狭いながらもうっとうしくなく伸びやかな空間にしたい、と考えました。
三部屋を原則にしていますが、四部屋タイプもあります。それはワンルームマンションに対応するのではなく、1DKに対応するような規模の住戸です。その場合に追加した一部屋はテレビ室としました。続き間のように二室になっているベッドの部屋は、隣家の浴室が隣り合っている関係で、一方はベッドの幅だけの細長い部屋になっていますが、もう一方は大きい部屋になっています。
孔を大きく開けることは前提ですが、開け方をいろいろ考えています。ドアであってもドア的なプロポーションではなく、構造的に許される限り幅が大きい孔にしています。通り抜けるわけですが、敷居をつくって空中に持ち上げて窓に近い孔にしているようなところもあります。出入りが激しいテレビ室とキッチンの間のドアは床と付けていますが、ベッドの部屋のドアは浮いていた方が離れた感じが出るのではないかと考えました。コンクリートで仕切っていても、なるべく大きな孔をあちこちに開けています。孔は光の問題もあって、ガラス張りにする場合と不透明なドアを入れる場合と何も入れない場合と、いろいろバリエーションを考えました。階段室に面する部屋がお風呂だったりキッチンだったりざまざまなので、室内の家具の高さに合わせて窓台の高さを決めていて、自然にバラバラ感のある立面ができました。