アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
中国の天津市の住宅地のプロジェクトで、戸建て住宅と集合住宅が集まってできる住宅地の計画です。マスターアーキテクトの山本理顕さんが、日本の建築家を集めて共同でマスタープランをつくり、それぞれが住宅を分担して設計するというプロジェクトで僕を呼んで下さいました。ほかにアトリエ・ワン(塚本由晴十貝島桃代)、小嶋一浩さん、宇野求さんが参加されています。建築家それぞれが自分のエリアに責任を持ちながら個別の住宅も設計します。
僕が担当するのは延床面積600平方メートルという非常に大きな住宅です。日本の住宅はだいたい100平方メートル、大きくても200平方メートルに4,5人の家族という構成です。ところがこの中国の計画の場合、600平方メートルに住む人が夫婦と子どもひとりですから、その規模の大きさにまず驚きました。600平方メートルという広さを使って、どうすれば面白いことができるかと考えました。また、住宅地全体を設計するわけですから、環境に対しても何らかのことができるのではないかと考えました。
その結果、その大きさを遺憾なく体験できる形として平屋を提案することにしました。さらに600平方メートルの広さの活用法として、40LDKというアイデアを提案しました。つまり部屋がたくさんあって、それを少人数で使うということです。日本の一般的な戸建て住宅では、部屋は全部で七つぐらいで、それを四人から五人で使います。そうすると、リビングはいろんな機能を持つことになります。たとえば、テレビを見たり、おしゃべりをしたり、本を読んだりがその一部屋で実現されます。でも40部屋となると状況は変わってきて、いろいろな部屋、いろいろな庭というのができます。たとえば、朝食を食べる部屋と、夕食を食べる部屋が違ったり、友だちを呼ぶ応接室とテレビを見る部屋、ビリヤードをやる部屋、図書室、自分の趣味の数に見合うような部屋数ができて、日本の住宅とは違った状態が出てきます。それは面白いのではないかと思いました。
最初はクライアントの中国人も40部屋を面白がっていましたが、奥の方になると誰も行かないような部屋もできるし、あまりにも複雑なので整理してくれといわれ、今は33部屋ぐらいになっています。それでもリビングがいくつかあったり、寝室や中庭がいくつかあります。また、廊下を使って各部屋に行くというツリー状の動線ではなく、ぐるぐるといろいろなところを回れる回遊式の平面が、さまざまな部屋を楽しむのによいのではないかと提案しています。 庭も、バスケットの庭、ダイニングの庭、茶室のための庭というような、いろいろなバリエーションの庭をつくっています。この住宅地は、それほど低密度ではありませんが、建物は塀のように低く抑えて、道路に対して圧迫感がなく空が大きく見えるものを提案しています。これは環境に対する提案でもあります。
「船橋アパートメント」と同じように、壁式構造かラーメン構造か分からないような大きな孔を開けて、コンクリート造であっても明るく透明な住空間をつくろうとしています。また、建物が持っている明るさが何となく感じられるような外観をつくろうと考えています。
中国の一般的な住宅地は、設計したひとつの住宅を次々にコピーして建てていくという方法ででき上がると聞いています。それに対してこのプロジェクトは、五人の建築家で違った住宅をつくるもので、しかも各建築家はそれぞれ三、四種類の住宅をつくるわけですから、さまざまなタイプの住宅ができます。中国の人たちにとっては、それだけ面倒なプロジェクトで、当初予定していた着工時期が遅れ、まだ実施設計中です。2006年から着工する予定です。