アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
これも賃貸の集合住宅です。まだ建っていませんが、今も進めているプロジェクトです。六戸の住宅が入る小さな賃貸住宅です。ここでは共用廊下を用いずに、外から直接住戸に入ることができる長屋型にしています。建物は全体として10メートル×10メートル、高さ9メートルのキューブ状の建物です。カーブした壁で内部を仕切ることで四つの違った形の空間ができています。カーブした壁で仕切ると片側は凹、逆側は凸になるので、それ自体で非対称が生まれる特性があります。それを利用することで、集合住宅の中で違った形の住戸ができるということを試みています。集合住宅を設計する際には、一般的に同じ住戸タイプをつくってそれを反復させることが、建設上の合理性という観点からも前提になっています。ただ、住む上でそれが合理的かというのは考える余地があります。むしろ一戸一戸が違った方がよいのではないかと考え、このようにカーブした壁で仕切り、異なった平面の住戸をつくるというのもあり得るのではないかと思いました。
壁は平面的にカーブしているだけでなく、垂直方向にもカーブしていて、それによって1階、2階、3階で違った平面、大きさが得られるようになります。一戸一戸がとても小さく、住戸によっては3階建てだったり、2階建てだったり、平屋だったりします。たとえば、1階は浴室で2階はダイニングリビングで3階は寝室という形になると、各フロアが同じ形・大きさである必要はなくて、お風呂は小さく、リビングは大きくなるほうが室内の使い方としては都合がよいわけです。この住戸タイプは、1階はエントランスとお風呂と狭い廊下だけの空間になっています。また、平屋で屋上庭園がついているワンルームタイプでは、1階がすべてなので面積を広くしていますが、2、3階は小さくてよいので空間を隣にあげています。狭い住宅の中で空間をお互いにやり取りしながらお互いの形をつくっていくという断面図です。カーブ壁が曲がっていくことで各フロアの大きさが変わっているのが分かります。
このように限られた大きさの中で、空間をもらったりあげたりしながらお互いができていく建物です。自分で範囲を拡張していくものもあるし、隣家の空間の関係から、自分の家の形が決められたり、自分の家のありようから隣の家を決めたりする。そういったお互いが形を決めていく関係性が面白いのではないかと考えました。