アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
松山にできました「菅井病院」です。「これぐらいクライアントにピッタリの建物はない」と、松山のほかの施主さんがいっているんですが、残念なことにクライアントはガンで亡くなりました。
建築家もそうですが、医者というのは、まさにその人の考え方があって、みんなそれぞれのタイプがある。その人がやりやすいような医療の考えでできているわけです。ですから、その人が亡くなったら全く新しいクライアントになるようなものですから、いろいろなことが起こります。「菅井病院」は、従っていままだそれに対処しているところで、未完成のようなものになってしまいました。いまは前面の病院を壊したのでバサッと見えていますが、病院をとりこわした敷地に高層建築が建ちますので路面からは建物と建物のすきまからちらちら見える程度の状態に、近いうちになる予定です。
この敷地には、まわりに木がたくさん立っていたので、残すようによけて設計していましたら、現在あるようなかたちができてしまいました。林のほうに面していたのは何とかそこに溶け込むような建築にすることがテーマだったんです。商店街に面したファサードでは、木のイメージをグラフィカルに人工的に見せるものになっています。というのは、道路との間に民家があります。その民家の方から、ぜひ部屋に目隠しの格子を入れてくれと、クライアントに要求があったんです。
私の作品で「池袋の家」というのがあって、まさに大変な密集地に建っているんです。そこに住む老人が、道路に面した窓があって、西日なのになぜかいつも布団を干したい。格子をつけたら動かないから困る。づまり開けたり閉めたりしたい。そういうがらり戸がほしいということで、丸いパンチングメタルの左右に動くものをつけているのですが、松山のクライアントはそれが非常にいいのでここにつけてほしいというのです。
最初は、そんな単純なものをつけるといやだなあと思って、木のイメージだから、ヨーロッパでは木の葉はトランプだからって、トランプの絵をつけて、その案を持っていったりしていましたが、施主と打ち合わせる中で非常にグラフィカルな感じのものになりました。これが町でおかしく思ったり、あるいは目立ちすぎると思われているようですが、でも、「なかなかいい。ほかのところを見下ろさないためにああいうのをつけてください」とやってこられた方もあるんです。下の民家からは、きちっとやってくれたということでちゃんと理解されているわけです。一見、そういう理由がないと「何を遊んでおるんだ」ということになりそうなデザインなわけです(笑)。
どなただったか「新鮮だからぴっくりしているんだ」という意味のことをいわれました。しかし、やっぱりビル群のうしろに隠れるものがいま町に露出しているので、異物をはめ込んだような感じの不協和音を呈している光景になっていると思います。
最後に、さきほどお話ししていた「湘南台文化センター」です。いろいろな施設が組み込まれておりまして、森のような林のような、民家集落のようなところに、新しい未来を思わせるような球が非常に含理的な構造を持って配されています。シアターの大きな球を宇宙儀といって、次のを地球儀といって、自っぽいのを月球儀といつて、もう一つフラードームのフレームというのがあって、四つのドームが埋め込まれている。またでき上がったら皆さんに見ていただきます。終わりにしたいと思います。