アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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妹島 和世 - 自作について
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東西アスファルト事業協同組合講演会

自作について

妹島 和世KAZUYO SEJIMA


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調布駅北口交番
調布駅北口交番
調布駅北口交番

新宿駅から京王線に乗車して二十分、調布駅前にある交番です。50平米の小さな建物です。前もっていくつかの要項を伝えられ、ある部屋を何平米とする、という具合に決まっている条件をもとにつくるかたちになりました。

いろいろな人が道を聞いたりする場となる事務室は六畳ぐらい。仮眠する場所として和室六畳ぐらい。待機室として六畳ぐらい。そしてトイレと洗面所と階段、廊下でトータルで50平米と決まっていました。二十四時間交代で生活しながら勤務するので、仮眠室などは外から見えない場所にする。万が一なにか投げ込まれたりしても危険のないようにする。地震などが起きた場合は、拠点としての活動が必要となるため、構造を二割増でつくる。目立って人にわかりやすいこと。市民が親しみを持てるように、オフィス部分は透明で明るい場所とすることなどをあらかじめ求められました。

応接兼待機室
応接兼待機室

そんなわけで、オフィス部分はガラス張りにすることがすでに決められているような状態で仕事がはじまりました。二階に和室六畳というのもルールですから、小さい住宅のようなプロポーションで建ち上がってきます。それを一種のランドマークとして目立たせなければならないのですが、駅前なので周囲に大きなビルが建ち並んでいる中で目立たせるためには、なにか外側にオブジェを付けるなり、変わった形態にするなりというふうになりがちなのですが、それを避けたいと思いました。高さ方向の決まりがなかったので、極端に上へ伸ばすことによって特殊なプロポーションにして、目印として対応しようと考えました。

後ろがすぐホームになっていて、この建物を、朝晩10万人の乗降客が見ることになります。一方、この建物を実際に使う人は二、三人です。その建築の内と外とのギャップがどうもうまく解消できません。住宅にしろ、寮にしろ、パチンコ店にしろ、それまでつくってきたものは、もう少し内と外とをスムーズにつなげることができたのですが、この場合の内と外の状況はあまりに違って、今までのような中の使い方から外側が出来上がっていくという関係が成り立たないことをつくづく感じました。

中の生活の場になんとか光を落とそうと思いました。広場側と後ろのプラットホーム側に厚い壁が二枚あって、その壁が丸いコンクリートの梁でつながれて、側面と天井面が構造からフリーになるものですから、高いところから光を入れて、風をサーキュレーションするということをしています。
 建物に穴を開けていますので、手前からアプローチしてくる人は、逆側の空が見えるようにしています。

 都市の中に小さな建築が投げ出されたときに、建築の構成要素が都市に表出してくる、ということがどれだけの意味があるのか。この構成要素をきちんと見据えようと思えば、構造以外の部分は建具という具合に、それがそのままかたちに表れてくるつくり方で、今までやっていたわけですが、どうも今の都市の中でその建築の小さな分節をそのまま表すことにギャップが生まれているのではないかと、この建物を設計するにあたって思いはじめました。もう少しなにか違ったつくり方ができないだろうかと考えるきっかけになりました。
 ですから、表情も内と外は大きく異なっています。中は真っ自につくっています。外側は真っ黒な壁になっています。フッ素樹脂の塗装の鏡面磨きですので、人がこの前を歩くと、影がぼんやり映ります。内と外がほとんど関係ないといえるような建ち方で立っています。

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