アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
「マルチメディア工房」とほぼ同時期につくった町立の美術館です。山の中に敷地があり、目線より上は山となっていて、雨が降ったりすると日本画の世界のような景色を見ることができます。どんなに美しい地方にいっても半分は都市と同じような生活があって、例えばトタン屋根の家や、倉庫などがぱらぱらと建っています。目を上げれば昔ながらの自然があるのだけれども、一方に古い民家とは違う新建材でつくられたものがちらばっている環境をどう理解したらよいのか、と悩みました。この土地の人も都会と同じような情報を得て生活しているわけで、昔ながらの環境と理解するのは難しいように思いました。
ランドスケープもいっしょに委託されました。敷地の中だけを建築に合わせてデザインすることにためらいました。それで、なんでもないようなものを敷地に置くというような方法をとりました。
雨の日、車の搬入に際して入ってくる水など、とにかく水を呼ぶものは絶対建物内に取らないよう、強く要望を受けたので、中庭を取ったり、機械室や収蔵庫を外に出しているうちに、全部外に出してしまったほうがいいように感じて、展示室以外はすべて外に出してしまいました。その結果、どこが正面かわからないような感じでつくることができました。いろいろなところからアプローチできるようになっています。
外壁は、ガラスと黒いパネルの両方に半透明のフィルムを貼って、光の当たり方によっては全体が一つの素林に見えるように意図しました。ですから、上から見ればかたちはわかりますが、回りを歩いていると、どこが正面で自分が今どこにいるのかわからないような建物です。収蔵庫やオフィスは黒いパネルです。フィルムに光が当たると全体的に白っぽく見えます。夜になるとガラスとパネルの差がはっきり出てきます。
インテリアですが、今まで半透明のフィルムは何度も使ってきましたが、それがどんなに淡いものでも外が見えなくなってしまうので、今回は特殊なものを自分たちでつくりました。半透明でありながら、外の景色が見えるようなものにして、ガラスというハードな素材をレースのカーテンが掛かっているような柔らかい素材に変化させることに成功したと思っています。