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東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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エレクトロニックな時代のドーム
ソウルドーム指名設計競技案
ソウルドーム指名設計競技案
ソウルドーム指名設計競技案
ソウルドーム指名設計競技案

次に紹介するのは、昨年の夏、ソウルで行われたコンペティションのプロジェクトで、2002年のワールドカップのためにつくろうとしたサッカー場のドームです。これはパブリックなものではありません。LGグループという野球のチームを持っている大きな企業グループによって企画された招待コンペです。アメリカのチームがニチーム、ョーロッパが一チーム、それとわれわれのチームです。竹中工務店と私の事務所とで組んでこの案をつくったのですが、結局アメリカのコマーシャルなプロポーザルが選ばれました。しかし、その後、韓国の経済が厳しくなったために、このドームはつくられなくなったと聞いています。僕としては何とか実現したいと思ったプロジェクトです。

直径が二百五十メートルあって、完全に球体の一部を切り取ったドームです。ハン川という韓国の中央を流れている川のすぐ近くにあります。全部ガラス張りのドームを提案しました。十メートルのグリッドでスチールのフレームが組まれ、その上にガラスが張られ、下のほうにもう一つ透光率の高いテフロンの膜が張られる予定でした。

ストラクチャーは構造エンジニア佐々木睦朗さんの提案で、直径三十センチぐらいのフレームがスチール・パイプで十メートルのグリッドに組まれています。韓国の場合、風や地震力に対する規制が日本の半分以下です。太さをもたない線材のようなイメージです。メインのストラクチャーをサポートするように上下にストラクチャーが付加されます。つまり、ちょうど半分ずつずれたようなところに十メートルのグリッドでテンション・ワイヤでストラクチャーが組まれ、下にも同じようにテンション・ワイヤのストラクチヤーが交互に組まれ、それらがテンション材で両方に張られて立体トラストをつくっているストラクチャーです。

その上のテンション・ワイヤのレベルに二重のガラスが張られ、下のテンション・ワイヤのところにテフロン膜が張られるわけです。テフロン膜といっても、これは風を受けませんから非常に透明度の高いテフロン膜です。ストライプは二重のペアガラスの間にフォーカル・プレーン・シャッターという細かいストライプ状のシャッター機構を組み込んで、それがリニアモーターによってパネルごとにスライドするわけです。ですから透光率を五○パーセントからゼロパーセントまでコントロールすることができます。それによってガラスの部分のすべての部分の透光率をコントロールしようというのが、このドームの一番の提案です。

昼光の状態でスポーツを行うとき、このフィールドを均一な明るさにしようと思うと、むしろ一番トップの部分は少し遮光して周辺部の透光率を上げたほうが、全体としては均質な空間になります。また、透光率を上げればうっすらと内部から空が見えるような状態になると思います。完全に遮光しなくてはならない状態もあると思いますので、遮光することも可能です。パンテオンのような状態をつくり出すことも簡単にできます。

例えば、福岡ドームなどはメカニカルに開閉をします。しかし、ここではエレクトロニックな時代のドームとは何かということを考えたいというのが、この提案の趣旨でした。完全に人工的な空間ではありますが、そこにテクノロジーをもち込むことによって郡市空間の中でこのドームの熱気を感じることができるわけです。あるいは中にいても強い太陽の光や満月、星を感じることができます。逆にテクノロジーを加えることによって自然が見えてくるような、そういう何かもう一つの自然をつくり出していくドームをここでは考えたいと思いました。

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