アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
昨年竣工した「大館樹海ドームパーク」です。大館市は人口七万ぐらいの町で、青森との県境に近いところにあります。周囲は田んぼで、町の中心から少し外れた新興住宅街の中に敷地があります。これもコンペティションの段階から竹中工務店と一緒にチームを組んで考えました。
このドームは、従来のドームと違っていくつかの特徴がありますが、一番の特徴は、卵を半分に割ったような、真円ではないということです。その最大の理由は、夏も冬も日本海側から一定方向の風が吹くことにありました。特に冬は季節風が非常に強く、かつ雪も多いという状況で、この周辺にできるだけ風が渦を巻かないようにと、このようなかたちになりました。もう一つの理由は、野球を中心に考えると、先ほどのような大きなドームと違ってぎりぎりのところで野球をしなくてはならないので、そのときにできるだけボールが天井に当たらないようにということです。自然を反映したかたちは何となく自然にもなじみやすいような気がします。完全な球体の一部があるよりは、非常に大きな人工物ですけれども別な意味でもう一つの自然がつくられたような印象を与えると恩います。
通常のドームはまわりが壁で囲われていますが、ここではコンクリートのテンションリングが地上十メートルから一番低いところで五メートルぐらい浮かんでいて、そのテンションリングの下は開放されています。アクリルは入っています。そうすることによって外のランドスケープがそのまま中まで連続していく印象を与えます。浅く水を貯えた調整池があります。フィールドは人工芝ですが、それが外野席にいって、そのままスロープになって外のマウンドに連続していき、さらに林へつながっていきます。一連のランドスケープの連続の上にこのドームがぽっかりと浮かんでいるような、外と連続したランドスケープをつくりたいということが、このドームの二番目の特徴です。
夏は、調整池の水の上を通って冷やされた空気が内部に入って、上から抜けていきます。これはずいぶん効果があるようです。
付属施設は県がお金を出したのですが、大館市の施設で、レストランや宴会場、売店などに使われています。
最大の特徴は秋田杉の集成材でできていることです。構造的には決して有利な条件ではありません。積雪荷重が一・五メートルありますし、杉はベイ松に比べて断面が三割ぐらい大きくなります。しかし、地元の産業に貢献するということで秋田杉が選ばれました。
最大スパンが百八十メートル、それに直交する軸の最大スパンが百六十五メートルぐらいあります。長手方向は上下に二段のアーチが組まれています。それと直交する方向はその中間を通っていくようなアーチで、その間をスチールの部材で結んで、立体トラスがつくられています。横方向に二つに割った部材を二段にし、かつそれぞれが横方向に二つの集成材を組み合わせる工夫がされています。一辺六メートルのユニットを現場ですべて組み上げていきました。難しい工事でしたが、すごい精度でつくられ、日本のゼネコンのすごさに改めて感激しました。外国へ行ってレクチャーをすると、自分の国では絶対にできないとみなさんからいわれます。
寒冷地なので膜を使うことにはかなり抵抗があったのですが、タ景のイメージ、特に雪が積もっている中でぼっかりと浮かび上がるような風景を何とか実現したいと思って、ニ重のテフロン膜で覆いました。この二重のテフロン膜の間に冬は暖かい空気を流すことによって結露を防いだり、上の雪を溶かしたりします。昼間自然光で電気が節約になるということもメリットです。
先ほどのソウルのドームで申し上げたように、木を使い、自然の中に極めて人工的な造形物であって、それが完全に自然と対決するようなものではなく、これが置かれることによってまた自然が別の見え方をしてくる、そんなものでありたいと思っています。私の考える建築は、アルミやスチールやガラスを使ったりすることが多いのですが、それはハイテックな表現をしたいということではなく、それらを使うことによってもう一度自然が見直されてくるような、そんな軟らかい表現でありたいといつも思っています。