アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
スイスのバーゼルという町で今年の初めに行われたコンペティションのプロジェクトです。BIS(バンク・オブ・インターナショナル・セッツルメント)という巨大な銀行がありまして、その増築のコンペティションが行われました。ジャン・ヌーベルやヘルツォーグなど十人が呼ばれて競いました。われわれの案が通ったのですが、幻のプロジェクトになってしまいました。すぐ近くにマリオ・ボッタがつくった銀行があるんですが、それが売りに出され、それを買うことになったということで、増築の必要がなくなり、無期延期になってしまいました。われわれは、銀行だしスイスだからこれほど堅いコンペティションはないだろうと思って、いくつかのコンペティションを捨ててこれに臨んだのですが、なかなかうまくいかないものです。
BISについては、当初われわれもどういう銀行なのかよくわからずに説明会に行きました。今建っているタワー状のバベルの塔のような建物がその本体で、六○年代につくられた二十階ぐらいの建物です。セキュリティが異常に厳しい銀行で、内部に入っても人っ子ひとりいないんで、これは一体どういう銀行なんだろうと思って説明を聞いていました。日本でいえば日銀のようなところで、日銀の総裁クラスの人が月に一回はやってきてここで金融政策を相談するといった大層な銀行だということがわかりました。
増築は二期に分かれて、全部で約二万平米ぐらいの予定でした。庭になっているところに増築をしていくプロジェクトでした。ほかの建築家の提案は、大体ここに別のもの、あるいは外側に沿って建築をつくるという計画が多かったのですが、われわれは庭をかなり削って水平に延びていく低層の建築を提案しました。
一階の主要な部分が、ディーリング・ルームで、コンピュータがたくさん置かれていて、世界中の相場の情報が絶え間なく入ってくる、銀行の政策を決定するための心臓部のような重要部分が拡張されてくるようにつくっています。いくつかの島ができて、四層分貫くような光のコートができます。同時にそれがストラクチャーにもなっています。その上の階が会議室です。今も大仰な会議室がありますが、もう少しそれを開かれたものにしたいと思ったわけです。それからさらにその上がオフィスです。その上は板を張ったデッキで、そこに食堂、カフェが部分的にきます。チュープ状のスペースをいくつか設けて、それでストラクチャーをつくってポイド・スラブをかけていきます。緑になるチューブもあれば水を貯めたようなチュープもあるといった、平面的にべったりと広がっているそこに変化をもたせようというのがこの提案の趣旨でした。