アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
最終的には選考に漏れたのですが、古河とほぼ同じ時期に延長でやったコンペです。基本的には、ミース・ファン・アル・ローエの建物があるアカデミックゾーンと大学が買い取ったレジデンシャルゾーンがあって、そのふたつの間に大きな道が通っているのですが、大学としてはふたつのゾーンをひとつのキャンパスとしてまとめたいということと、今パーキングになっている場所が敷地で、そこに学生センターという核をつくりたいという要項でした。もうひとつは古い電車が高架で走っているので、防音を考えてほしいということでした。学校側がたたき台としてつくっていたのは、防音壁になるような細長い建物だったんですけれども、私たちは高架の下をすり抜ける低い建物を考えました。
平面形は、ミースが四角グリットをそのまま大学の中にもち込みながら計画していたので、私たちも都市の中に残るっているその四角グリットとほぼ同じかたちの建築をつくりました。ここに中庭が見えますけれども、自然にゾーンを少しずつ分けていく方法を取っています。電車は都心から郊外に行く途中でここを通るわけですけど、騒音に対してはガラスのカバーをつくって、ここだけ音が一瞬消えるというような見せ方を提案しました。
百八十メートル×八十メートルぐらいの矩型の建物で、天井が三・三メートルとか四メートルしか取れないので低く、約六メートルグリットに細い柱が並んでいて、間仕切りもまた厚いガラスでやろうとしました。柱をすごく細くして、なくすことは考えませんでした。中庭はグリーンガラスで、屋根はガラスではないので、奥行きがある平面に対して、どこまでいっても明るさが連続しているような場所をつくろうとしました。
一九九八年のオランダのアルメラという場所でつくるシアターとカルチャーセンターのコンプレックスです。幸運にもコンペで勝てたので、基本設計を進めています。
アルメラはまもなく二十五周年を迎える新しい町で、アムステルダムから三、四十分のところにあります。オランダのテラスハウスのようなもち家政策によって、急激に人口が増えて大きな町になっています。街の中心がないような場所ですが、六年ほど前からレム・コールハースが都市計画をしていて、それに基づいて昨年から、いろいろな計画が現場に移りつつあります。
要求されたプログラムによれば、大きなシアターと中ぐらいのシアターがあって、それに対してカルチャーセンターという小さなスタジオとか絵画室とか、コンピュータ室や焼き物室などがたくさんつくられることになっています。通常ですと、大きな場所が全体を決め、その後で、大きなスパンから小さな部屋が小さく切られてつくられていく、という過程を取ると思いますが、私たちにとっては、どちらも同じ重みのはずだと考えたので、なるべく小さい部屋から大きい場所まで全部が平等に並ぶようなプランにしようと思いました。それから全部を同じ構造システムで、ある部分は大きなスパンを区切って部屋ができてくるのではなく、各々の部屋が全体の構造の何らかにかならず関係をもつというようなことを考えて、これまでにも佐々木睦朗さんと試みた薄いパネル構造を提案しました。
今後、音や断熱の問題で、もう少し厚くなるのではないかなと思っていますが、構造的には、鉄板を型枠にした六十ミリメートルのプレキャストコンクリートみたいなものをつくって、それを建て込んでいくと、構造パネルは非常に量が少なくなります。その構造パネルもガラスのパネルも防音パネルも不透明パネルも、とにかく同じ厚みでつくって並べていくと、全体が出来上がっていくというようなことを提案しました。
各々の部屋の要求によって、ここを透かしたいとか、ここを壁にしたいとか、それをつなげていったら全体ができたという考え方です。
部分的にはシアターの裏側に楽屋室とかオフィスをつくります。ただの四角形が並んだ平面ですけども、中は公園のような場所になっていて、ルートの取りかたによってはいろんな空間を体験できます。
模型では線の密度だけで表していますが、不透明から透明までいろんな密度のものが重なりながら、要求によって全体のプランが出来上がっていきます。たまたま部屋が終わったら、そこが断面として現われてきて、透明なところはけっこう重なっても中まで見えるというような場所を今のところ考えています。
中世の典型的な街で、標高が二十メートルぐらいで百メートルの高低差があります。サレルノの街を歩いているととてもおもしろいです。写真で見るエリアは、家々が道とぎっしり重なり合っている場所です。平坦ではないのですが、緩やかな勾配ですからだいたい歩けますが、別の方向は急な階段で強引につないでいる構造になっています。
コンペ自体は、どのようなプログラムをつくって四つの古い建物をどう改築するか、また旧市術地のエリアをどうやって再生させるか、ということです。これだけ高低差があるところで、しかも動力なしという条件ですから、歩きやすい場所をつくるのはむずかしいと思って、とにかく歩くのが楽しくなるような場所にしようということで、全体を公園のようにした提案をしました。
古い建物のエリアを床だけ白くペイヴし直して、そこだけ手を入れています。ここが昔ハーブの街だったものですから、全体をハーブミュージアムのようなかたちにします。高低差があって、しかも迷路のようになっているので、そのレベルと方向がわかるように地図のようなものを床につくっています。市が壊すと決めている古い建物は、それと同じ輪郭でガラスの温室をつくってハーブ園にして、空いた場所に小さなカフェや休憩所や屋外ギャラリーのようなものをつくり、また四つの建物の増改築は、ホテルと学校、それから大きな美術館、そしてパーキングをつくるという提案です。
ローマの市術地から車で十五分ぐらい行った公園の中に、美術館やアカデミーがあるエリアです。昔の工場の倉庫を美術館にするということで、壊しても残してもどっちでもいいということでした。だいたいの人はちょっとだけ残してあとは全部壊して何か新しいものをつくっていました。コンペに当選したザッハ・ハディドの案は全部壊した案かもしれませんが、私たちとしては、とにかく全部残して考えようとしました。
白色につくってあるのが既存の倉庫で、のこぎり型の屋根だけ取り払って、壁とか柱は全部残して、既存の倉庫をつないでいって全体が出来上がるようなものです。
そのつなぎ方ですけれど、バラバラにある倉庫のすき間にガラスの廊下をつくっていくと、結果として倉庫はそのまま放置されていますけれど、そのすき間を全部ガラスでつくっていくことによって、倉庫が全部ガラスでくるまれて、ガラスと倉庫のすき間の八十センチメートルぐらいの場所が新しいインスタレーションの場所になるという提案です。古い倉庫に対してガラスがついてくるわけですから、中を歩いている人にとっては、こっちは外になるわけです。そのまま残っていますが、結果的には古いものがすべてガラスでくるまれて、そのすさ間の部分のインスタレーションのありかたによって離れたものをつないでいきます。