アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
今日はこの一年でやってきたことについてお話ししたいと思います。
以前、僕の建築のつくり方は、まず内部の構成を考え、それをどうやって建築にしていくかを考え、その結果として外観が決まるというものでした。1997年に竣工した「潟博物館」も外観のことは考えないで、中の蝶旋状形のギャラリーの組み立て方を考えて、外の形は自動的に決まっていきました。外装にガラスを用いているので、特に夜景は外観というよりは構成そのものです。そうやってつくるやり方は僕にとってしっくりといくものですが、もし中の構成について提案できないプロジェクトであったら、いったい何ができるだろうという疑問も常に感じていました。
昔もそうだったのかもしれませんが、今は建物なり何かをデザインするとき、デザイナーがすべての領域をコントロールすることはできません。敷地の外側に対して、こうなったらいいなと思っても、それがデザインできるのは安藤忠雄さんぐらいです(笑)。
たとえばオフィス。僕はまだオフィスを設計したことはないんですが、クライアントからオフィスの平面のつくり方について要望が強くあって中の構成を考える余地がなくなったとき、たぶん外観だけをつくることになります。そんな場合に建築として何ができるかということです。
「潟博物館」が終わってまもなく、ルイ・ヴィトン名古屋のコンペがあり、中も含めて建物全体を設計しました。それまでルイ・ヴィトンのお店に入ったこともなかったし、インテリアデザインについて僕ができることはあまりないように思っていました。こういうお店は四角い単純な箱にして、あとは内装に任せるというのがいいだろうと思いました。箱自体は鉄骨の壁構造のようになっていて、ディスプレイのウィンドウとかキャンティレバーで出ている壁などがあり、建物としての構成をもっているとはいえ、やはり外観が支配的なプロジェクトでした。
表面だけのデザインですが、それが表面だけに見えずにヴォリュームとして感じられるものをつくりたいと思いました。名古屋の栄という場所にあり、敷地は大通りの角地ですが、そこにある空気をルイ・ヴィトン的な空気の固まりに変えられればいいかなと思いました。表面しかやっていませんが、空気の固まりが出現したようなものにしたかったのです。ここで用いたのはガラスのモアレという方法です。最前面のガラスと、その1.2メートル後ろにもパターンが入ったガラスがあって、それが重なるとモアレが起こります。
これがうまくいったと判断されて、東京銀座にある松屋の店舗の外装も依頼されました。名古屋のようにという要望があったので、同じようなモアレの表現です。ただ名古屋と違って既存の建物の改装ですから中の構成はいじることができなくて、構造体を壊さずにその前に皮膜をつくるという、より表面的な仕事でした。中が少し透けるようにするなど、全体として一体感はあるけど部分的にちょっと表現を変えています。名古屋の時より意識的に表面だけをやりながら、全体をコントロールしていることを見せたかったのです。