アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
9月にできた六本木ヒルズのルイ・ヴィトンです。これはルイ・ヴィトンのデザイナーとイタリア人デザイナー、アウレリオ・クレメンテと僕の共同プロジェクトです。ファサードには直径10センチメートル奥行30センチメートルのガラスチューブをハニカム状に並べました。ここは六本木ヒルズの一角ですから、まとまりのない空間で、しかも、もともと二店舗入る予定だったところをつなげています。平面はU字形で、さらに出っ張りがあるような使いにくい空間でした。天井高も吹抜けの位置も最初から決まっているほか、最初から箱になる部分のスケールやプロポーション、また光の入り方も決められており、表参道のプロジェクトとはぜんぜん違うものでした。
表参道は一種の美術館のようなつくり方でした。建築家がまず展示室をつくって、その後に作家がインスタレーションをするというような作業です。展示室、この場合は壁もつくれるわけですから、構造体で規定するようなサイズやプロポーションは建築家が決める。そこから先の内装はインスタレーションの範疇に入るわけです。
六本木はそれはできないプロジェクトでした。ベースになる架構とか空間はいっさいはいじれないし、それ自体に魅力がない。残るは内装を含めて表面しかありません。ここではファサードからはじまって、中もすべて直径10センチメートルの円という単位でやっています。インテリアでは直径10センチメートルの円の金属リングを使ってそれによってどこまでいろんな場所の差ができるかということをやってみました。10センチメートルの円の連続でできているところは、面的に見えたり何重にも重なって見えたりします。ディスプレイも同じ丸でやっていますが、立つ位置や場所によって見え方が代わります。これもひとつの装飾だと思うのです。
ここにおいてはいわゆる建築家がつくる空間はなくて、装飾という要素のひとつの大きさを決めること、要素のつながり方を決めること、それが建築家の仕事です。しかし、装飾を決めるだけだから空間の質が変わらないのではなくて、それによってぜんぜん違う空間になってしまいます。ですから何かを選ぶ、どれを選ぶかということはとても意味があることなのです。