アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
幕張メッセのモーターショーで手がけた三菱自動車のブースです。一辺約50メートル角の大きなものです。モーターショーのディスプレイは車を見せるためのものですが、ステージをつくって目立つようにデザインしたり、パビリオン形式で見せるようにつくられることが多いようです。また、完全に閉じた空間をつくれば演出が楽で、そういう例も見ましたが、それもやりたくはありませんでした。ルイ・ヴィトンの名古屋店のときは、その場所にオブジェクトをつくることより、その場所の空気を変えることでデザインができないかと思いましたが、幕張メッセは天井のトラスがうるさいし、それが見えてしまうので場所の空気を変えるのは大変です。でもオブジェに見えないやり方でブースができないかということを考えました。車のかたちを見せるわけだからきちんとライティングしたいし、天井にフレキシブルに照明がつき得ることが非常に重要です。でも、照明のグリッドはふつうだと無機的ないかにも展示場になってしまう。だから照明のシステムそのものをデザインしました。平面的にはリングが重なり合って雲みたいになっているんですが、重なり合うところはジョイントになっています。多く機械はジョイントがまずあってそこに部材がくっつく形式ですが、そうではなくて、部材と部材が交差することでたまたまジョイントができてしまうという方法を考えました。リングとリングが相互貫入するようなことを考えようとしたのです。角パイプを隙間を空けて並ベフィンガージョイントのようにして交差させ、それをジョイントにするというものです。
構造的にいうと、30ミリ角のアルミが並んでいる間に10ミリのアクリルが入っているという、アクリルとアルミでできた梁です。これをもしアクリルだけでやるとすごく厚くなるし、開く方向の変形が大きいので、それを抑制するのにアルミが必要です。ただ、アルミだけでは隙間が空いているから梁にならなりません。現場でジョイントするんですが、アルミとアクリルがずれたところでジョイントすればできあがったときは一体になるということで、ふたつの部材でやるようにしました。住宅や美術館などを設計すると100年もつような建築にしてほしいといわれます。ルイ・ヴィトンのような商業的なものではだいたい5〜10年もつものにしたいといわれる。こういう仮設建築だと二週間です。ライフスパンが全然違います。
住宅や美術館など、長いスパンが求められているものはどうしてもそのデザインの中の本質的な部分とテンポラリーに変え得る場所というふたつの部分をつくらなくてはなりません。具体的にいうと、構造体、構造体が決める空間、窓の位置とか光の取り入れ方などが普遍的な部分で、それに対して内装や家具は変わり得る部分です。そのために内装はたまたまこうなっているけれど、それをはずして考えればこれはいい建物だといえるような感性がそこから育ってきます。だから住宅や美術館を雑誌などで見るときには、内装やインスタレーションがない状態でも僕たちは建築を理解できます。ところが商業的な建物になると、構造的、普遍的な部分と内装を含めた装飾的なものの間で、装飾的なものがだんだん優位になってきます。ひとりのお客さんが何回行くかわかりませんが、頻繁に目に入ってきて感じられるものにウエイトが移っていくのです。仮設のブースになるともっとスパンが短いですから、ほとんどすべて、構造までも装飾になってしまう。本質と装飾の区別がなくなる状態。とても面白いなと思います。