アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
今日の講演では、最初にベトナムの実験集合住宅の話をしようと思います。2003年6月、ハノイに竣工して9月頃から使われ始めている建物です。ハノイは今、観光ブームで、日本からもたくさんの人が行っていますが、僕たちは5年ぐらい前から通っていました。
ハノイでは、日本と違って、自分で多分こうなるだろうと思っていたことが裏切られます。自分の感覚とか経験で予測できないことがいっぱい起こってきます。そこで設計を進めていると、自分でもびっくりするぐらいワクワクできるのです。香港経由で丸一日かかる移動時間も苦になりません。ほかに中国の北京や天津では住宅を、カタールのドーハでは大学の教養学部をつくっていますが、そこでもやはりワクワクできます。自分がこんなに面白いと思うことですから、共感してもらえる部分も多いのではないかと思っています。
日本は今、建築をあまりつくらなくてもいい時代になりつつあります。大学でも、学生はリノベーションやコンバージョンの課題にエネルギーを出しています。それはそれで共感もできますし、確かに何でも壊してしまえばいいという時代ではありません。
でも、実際にはまだまだ世界の中には建物をちゃんとつくってほしい人たちがたくさんいます。そういうところでやっていることも含めて相対化しながら、再度、日本の状況を見られたらいいなと思っています。
僕の設計活動は学生時代に立ち上げたシーラカンスから始まって、今はかたちを変えてC+A(シーラカンス アンド アソシエイツ)という事務所になっています。ここ名古屋にも事務所があり、ふたりパートナーがいて、東京では僕を入れて三人のパートナーでやっています。今日お話しするのは僕が中心になってやっている仕事です。ハノイのプロジェクトは東京大学の曲渕英邦さんの研究室と、東京理科大学の僕の研究室の学生が中心になり、それに現地の人たちが共働するかたちで進められました。ほかの海外プロジェクトも、磯崎新さんとのアイ・ネットだったり、山本理顕さんを含む五人の建築家との共働プロジェクトだったり、新しいテーマに向かっていくときには狭い意味での共同設計とは違ったコラボレーションが絶対必要になっていることを実感しています。