アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
実際につくったスペースブロックハノイモデルでは、コンピュータで空気の動きを解析して形を決めました。CFD解析というものを、東京大学の加藤信介さんの研究室でやっていただいて、途中からはやり方を教わって僕の研究室で行いました。モデルを変えるたびに空気の動きをシミュレートできるのでたいへん便利です。空気齢という言葉があります。おおざっぱにいうと、長い間留まっていると空気の年齢が加算されて淀んだ空気になるということです。その汚染された空気が建物のどこにも溜まらないように設計するほど換気通風効果があるということです。
実際につくったスペースブロックハノイモデルでは、コンピュータで空気の動きを解析して形を決めました。CFD解析というものを、東京大学の加藤信介さんの研究室でやっていただいて、途中からはやり方を教わって僕の研究室で行いました。モデルを変えるたびに空気の動きをシミュレートできるのでたいへん便利です。空気齢という言葉があります。おおざっぱにいうと、長い間留まっていると空気の年齢が加算されて淀んだ空気になるということです。その汚染された空気が建物のどこにも溜まらないように設計するほど換気通風効果があるということです。
日本のプロジェクトですが、東京大学先端科学技術研究センター三号館(一期)にはすごい吹抜けがあるんです。写真だけ見た方は、何で国立大学でこんなにお金のかかることをしているんだと思われたかもしれませんが、そうではなく、新鮮な外気を必要とするドラフトチャンバーを用いる科学系などの研究室に、空気を運ぶ空間なのです。普通の空調はせず、余冷と余暖だけをして外の空気を建物全体に流通させるというのが、この建物の空調の考え方なのです。中庭に面する壁をそのまま平行移動させただけなので、お金は別にかかっていません。PC・PCaでできたフレームの中に大きな吹抜けをはめ込んで、そこに「ビッグハート出雲」のプロジェクトで開発したコンピュータで動く窓を使っています。簡単にいうと、外のほうが涼しい時には勝手に開いて、雨や風の強い時には中の環境が悪化するから外のマイクロクライメイトを測定しながら閉まったり開いたりする呼吸する窓です。空気の動きをイメージしながら建物全体の換気のことを考慮している点でハノイのプロジェクトと似ています。ハノイは年に2カ月ほど寒い時期がありますが、それ以外は暑いのでみんな寒いのは我慢します。でも東京だとエアコンに慣れているから寒いのも暑いのも我慢できない。となると、このぐらいの仕掛けをするとハノイと似たようなことができると思いました。
ハノイのプロジェクトもスペースブロックという方法でつくっています。この角砂糖のような積み木をつないでつくったかたちを、僕らはベーシックスペースブロックと呼んでいます。もともとスペースブロックの考え方は元パートナーで今、名古屋の淑徳大学にいる日色真帆さんと一緒に事務所での調査として始めたものです。建築は三次元なのになんで平面や断面という二次元で考え表現しなくてはいけないのか、それが専門家とそうでない人とのコミュニケーションレベルを下げているのではないだろうか、平面図は建物を歩いていても見えないのにプランがきれいといういい方がされるのはどうしてだろうか、というところから、立体は立体のままでという考えから生まれたものです。
たとえば積み木が三つだと形は直線かL字形しかできませんが、四つだと田の字やTの字などたくさんできるわけで、五個までつなぐと組合せが39通りあり、ほとんどの形がつくれそうだと考えていきました。また、積み木を白と透明にしてインテリアと外部空間といった意味づけをすると、ポーラス(多孔質)な度合いの高いものが簡単にできるのです。これは何かに使えるのではないかと、学生の卒業研究などと合わせて研究を進めました。カウントするのが簡単なのもこの方法の特徴です。マスとヴォイドを50対50とすれば、そのままモデルができていきます。
これを実際に使うと面白いものができるんじゃないかと思ってつくったのが「スペースブロック上新庄」というワンルームアパートです。ルールはひとつだけ。積み木の中をさらに間仕切りすることはしないということです。そうしますと、吹抜けをつくろうとすると、そのために積み木を組み合わせ、その後でキッチンをどこに置いたらいいのだろうかということを考えます。つまり生活のために設備を演出するという発想になるのです。
普通は水回りということから考えてプランをつくり、最後に立体にしていきますが、この場合は最初に空間ありきで使い方は後で考えるので、通常の建築計画でいうとまったくナンセンスなのですが、だからこそ逆に発見できることがあるのではないかという建物です。
結果、突然いろんをところに吹抜けが出てくるし、いろんなところから光が入ったり風が抜けたりする、快適な空間ができました。T字形の断面の住戸は、真ん中が吹抜けになっていてハイサイドライトがあります。ハシゴは住まい手が自分で用意して白く塗ってコーディネートしてくれました。ジグザグのプランの住戸ではハイサイドライトを採ることで快適さや複雑さの度合いがすごく増しました。
実際にスペースブロックをつかってポーラスなものが何に使えるかという試みをいくつか行っています。ひとつは香港の九龍城砦という世界でいちばん高密度に人が住んでいた不法占拠の小さな都市をポーラス率50パーセントにしてやるとすごく性能がよくなるというものです。誰に頼まれたわけでもないですがやってみました。また、アジアデザインフォーラムでは、提案型のプロトタイブの設計を依頼されて台北の旧市街地にモデルをつくりました。 この台北モデルは映画館などが入る複合施設です。
普通は2.5メートルのモデュールを使ってベーシックスペースブロックをつくるのですが、これはプロジェクトが大きいので5メートルの、7.5メートルの、15メートルのといったモデュールを用いました。地面から外の空間だけを伝って歩いていくと上の方に出て、保存している建物の屋根の高さまでいってしまいます。さらに上へいくといちばん小さいモデュールでホテルとか集合住宅ができています。台湾は屋台街が楽しいのですが、そのストリートのアクティビティがそのまま建物の中に浸透しているもので、ここまでいくと建築なんだか都市なんだかわからない感じです。従来のプランがもっていた意味もよくわからなくなってしまいますね。