アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
北京でのプロジェクトは、山本理顕さんがコンペで取られた巨大なプロジェクト、建外SOHOの低層部分で、山本さんに一緒にやらないかと依頼を受けたものです。これは天安門広場から真東に四キロメートルほどの場所で、CBD(セントラルビジネスディストリクト)といって上海に負けないようにと超高層を建てようとしているところです。コンペになったCCTV(中国中央電視台)もここから歩いていける範囲です。
四つの住戸がおのおの縦に重なった集合住宅で、中国では戸建て住宅を別荘といいますので、各戸に接地性が確保されたこの集合住宅はSOHO別荘という呼び方をしています。一住戸は11.8メートル角の四層で500平方メートル。住宅の延床面積を見てもわかるとおり、中国のお金持ちは日本のお金持ちよりも数段上で、天津でやっている戸建て分譲住宅のプロジェクトでも一戸400〜600平方メートルというラインナップです。
新しい北京のど真ん中に建っていますから、住宅らしい住宅が望まれているわけではなく、二重螺旋階段が中央に組み込まれた提案に決まりました。クライアントは民間ディベロッバーですが、それまでどんな案を出しても拒否していたのに、別の時に考えていた二重螺旋の案をぶつけてみたら一発で受け入れて、その後いっさい変更なしで進んでいます。動線がダブルなので各階ごとにショップ、オフィスなどに転用可能なフレキシビリティが評価されました。
メイドルームをどこに置くのがいちばんいいのかわからなかったときに、日本がいかに均質な社会なのかを感じました。四つの住戸が入っていますから二重螺旋階段が四つあって、SOHOをイメージしているのでグランドレベルは何も入っていません。
現場ではものすごい数の人が働いています。中国でのコンクリート工事は、ごまかしながらもうまいものですが、鉄骨工事はめちゃくちゃでたいへんです。図面を見て、たぶんこんなものだろうとつくってくるのですごいですよ。間違えてつくった鉄骨階段も結局時間がなく、あちこち直して使うことにしています。構造的に成立していないけど無理矢理溶接してつくっているからモノコックでもつのではないかと、構造家の金田勝徳さんに検討してもらってます。全体は六期まであり、一期は2003年の10月25日にオープンしました。来年の3月までに三期までできます。
天津のプロジェクトは、もともと山本理顕さんのところにきた仕事です。それをアトリエ・ワン、西沢立衛さん、宇野求さん+佐々木聡さん、山本さん、僕が分担しています。いちばん大きいタイプは600平方メートルの住宅なのでみんなエスカレート気味で、西沢さんはテニスコートより大きい42LDKという平屋、山本さんは長さ50メートルの板のような住宅を考えているようです。みんなプレーンな形態なので、僕は形を出そうかと思いました。個室は全部三階にあって二階はがらんどうというタイプを提案しています。それぞれの住棟をどう配置するかという陣取り合戦も終わり、今はランドスケープをメールと二週間に一回のワークショップで検討しています。23ヘクタールの敷地に300戸。延床面積は12万平方メートルです。何だってできちゃうだろうという条件を与えられて、逆に何もできなくなりそうになりながら、みんな楽しみながらやっています。
建物自体が集まって森的なランドスケープを生み出さないかと考えています。ひとりひとりに離散してタワー状の住居があることで世界ができないかということを示唆しています。この案でも、夫婦ふたりであっても上のレベルではそれぞれが空とか緑に向き合っているけれど下の階にいくとリビングのような広い面積のスペースがあるという、それぞれが階段をもって空中へいくというようなつくり方をしています。