アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
千葉市立打瀬小学校は開校から10年が経っていますが、開校当時は児童数も少なく、オープンエドゥケーションでチームティーチングもうまくいっていたのですが、今は人数が増えてしまい、音の問題や多動性障害で気が散るとか暖房が効かないなどという問題も出てきました。再来年春の竣工をめざして、低学年用の校舎を増築することが決まり、その設計もしています。また、近く建つ「打瀬第三小学校」もプロポーザルで指名されて一等となり設計しているので、最近も頻繁に通い、この地域のユーザーや子供たちにアンケートを採ったりするつきあいがまた始まりました。
最初に打瀬小学校を設計したときには、人間をすべて点に還元してコンピュータで動画化し、人の動きから空間を立ち上げるという研究をしていました。ヴェン・ファン・ベルケルも同じようなことに興味をもっていて、オートマティックにやるのは難しいよねという話をしたことがありました。アレハンドロ・ザエラ・ポロも横浜港大さん橋国際客船ターミナルについて同じようなプレゼンテーションを昨年のベネチアビエンナーレでやっていました。
学校を説明するときによく使うブリューゲルの「子供のあそび」という絵画は、もともと青木淳さんが「御杖小学校」のレクチャーで使われていたもので、僕の著書にも許可を得て転載させていただきました。いろんなことが同時に起こるということをいちばんうまく示しているもので「子どもたちがイキイキしているのがいい学校」ということを伝えるのにいつも最初に見てもらっています。
宮城県迫桜高等学校は寒冷地に建つ、防風林に囲まれた学校です。最近は、あまり雪が降らなくなったといいますが、竣工直前に大雪に見舞われたおかげで、将来発生しそうなバグがつぶせました。総合高校は偏差値が高くなり進学校化する傾向があります。そうなると、たとえばもともとあった土木系が少数派になってしまうなどで、ある部屋が別の用途へと転用されることを考えておかなくてはなりません。プレキャストコンクリートを用いて、すべての壁をスパン方向に取り外せるようにしてあるのは転用を容易にするためです。また、梁は柱に取りつけたフックに引っかけています。耐力壁は南北方向だけですので、少し床を追加すれば幅12メートルの相当大きな一室空間が取れます。また、ここでは行き止まりがないようにとサーキュレーションにこだわりました。
岡山の吉備高原小学校の平面は80メートル角です。学校というのは可能な限り平屋に近いほうが喜ばれます。はじめは平屋か二階建てですと違和感をもたれますが、現場の先生たちは、それができるんだったら移動も楽になるし学校中でやっていることが伝わってくるからいいといわれます。黒板壁と呼んでいる黒い壁が耐震要素です。公園にパーゴラのような屋根が架かって学校になったというようなものが、この場所にはいいのではないかと思いました。
新潟の越後妻有アートトリエンナーレでは、期間50日のための予算50万円の図書館、中里村図書館ファーストステージをつくりました。オル・オギュイベというナイジェリア出身でニューヨーク在住の哲学博士号をもったアーティストが、電源開発のために水量が少なくなった信濃川の堤防に電柱をいっぱい立てるというアイロニカルな作品を手がけました。この村に図書館がないということを彼は聞いて、その電柱の下に図書館をつくりたいといったらしく、ディレクターの北川フラムさんからその設計を依頼されました。
設計から含めて50日間で完了させた、100メートルのカウンターに1,000冊の本を置く図書館です。ところどころで通り抜けられるようベンチを設け、収納になっている部分にはレインコートを入れて、しまう際にはそこに被せます。さらにひどい雨の時には椅子の中に入れてある養生シートを全体に被せて店じまいするのですが、50日間ならなんとかもつだろうとやってみました。
「図書館」は屋根がなくて家具だけでできた場所、「吉備」は家具がある場所に最小限に屋根が架かっているもの、「打瀬」は外に子供たちの興味を引く椅子のようなものを置いたもの、という空間のつくり方です。
これはエジプトに建つ大エジプト博物館のコンペ案です。ルーブル博物館に対抗しようという建物なので、ここでのアクティビティは超一流のエジプトロジーの専門家と、大多数の一瞬立ち寄る観光客で、その両方にどう対応するかということが問題となりました。
そのために400メートルの「eye」と名づけた菱形の断面をもつスペースを入れています。この断面計画は、ピラミッドの断面を意識したものです。メインエントランスには、ルーブルでいうとモナリザに当たるようなものを展示します。それがたとえばロゼッタストーンなのですが、大英博物館に奪われたままなので、返還されるまではホログラムとすることが要項にも記されていて、ヴァーチャルなファクターを入れながら展示空間を設計しました。カンファレンスはロールバックチェアを用いて「eye」の断面にしています。エントランから上ってきたときには反射でいろんな見え方をします。外壁のダブルウォールはBASと同じ方法を用いていますが、内側から見てもこのパターンが見えるように使っているところがカタールと違うところで、直射光を入れてもいいところをつくり、空間の質を変えています。