アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
大阪の僕の両親の家です。将来構想部分まで含めると長さ50メートルの家で、これも「黒と白」の話でつくっています。ものが捨てられない人たちなので、片づけやすい家ということを考えました。納屋がついていると考えてもらえばいいのですが、片側に水回り、クローゼット、仏間、台所、それから井戸を残したいというので井戸の部屋、夫婦それぞれのアトリエ、靴が異様にたくさんあるので靴の部屋があります。黒の部分だけを通って裏動線が成立するようになっています。
この家は曲がり方だけがダイアグラムを空間に変換しているポイントなので、模型をいろいろつくって検討しました。全体は工業化木材とB・U・Dハンガーという金物を用いた木造で、片持ち柱のバットレスで水平力を受けているので斜め部材は一切なしで、トンネル状の空間が成立しています。中に入ると30メートルを見通すことができます。全部見えてしまうのではなく、思わせぶりに消えていくので歩きたくなるし、歩こうとするといろんなものが気になってそんなにスタスタと歩けない状態で、それを大阪大学の鈴木毅さんは「空間の摩擦カが高い」と表現してくれました。
大阪の小さな獣医院「ツダ・ジュウイカ」は100平方メートルの平屋です。構造家の佐藤淳さんと共働した建物で6ミリの鉄板ですべてが支えられています。海外の仕事は細かいところのコントロールはできないことを痛感しますが、日本のクラフトマントシップではこんなとんでもない現場溶接までつきあってくれます。これは坂茂さんとはまったく違った家具の家ともいえます。基本的に背板は構造的に必要なくて、機能的な必要性で加えられています。メッシュだけで全部支えられていて、構造は内側に使われているから結露の問題もありません。これも「黒と白」の組合せでできています。本来は小部屋だらけのビルディングタイプですから、獣医を大きい空間でつくるためにプログラムを読み下すたいへんさはありました。真っ白に塗りましたが、獣医ではなくアーティストのための空間であったら鉄板のままでもいいかなと思っています。でも塗っても重力感のバランスが変わったような不思議な感じになっていると思います。真ん中だけが少し高くなっていてスペースブロック的な空間の形を少しだけ与えています。この仕事では、あらためて日本だからできることもあることを発見しました。