アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
「熊谷のハウス」と同時に設計していた住宅で、延床面積もほとんど同じ82平方メートルです。違いがあるのは周辺環境で、都心の狭小地に建っています。敷地は環七の内側の準工業地帯にあって、容積率が300パーセントのエリアですから、周辺も密集しています。今もまだ古い平屋の工場などもある下町的な場所ですが、もう少し景気がよくなると3、4階建てのマンションに建て変わっていくと思います。
設計時に考えたことはふたつあります。ひとつは、敷地の南側に20坪の空き地があるのですが、そこに将来高さ10メートルくらいの建物ができてしまう可能性があることで、そういう建物が隣地に建ったとしても、日当たりと風通しを確保しないといけない、ということ。そしてもうひとつは、先ほど述べた「ドメスティック・ランドスケープ」に関して、立川や熊谷とは別の方法を試みたいということでした。
最終的には、敷地の南側にパーキングを設けて、残った土地の真ん中に、背の高い二階建てを建てました。建物の高さは九メートルを超えていて、一階も二階も天井高が4メートルほどあります。したがって、まず開口部を高い位置に設けることができますから、南側隣地に高さ10メートルの建物が建ったとしても、日照や通風が確保できると考えました。プランとしては3DK、つまりベッドルームふたつとゲストルームとダイニングキッチンという合計四つの居室があるのですが、どの部屋も天井高が4メートルあります。ちなみに、これらの居室の間に、それ以外のサービス諸室 -- 玄関・トイレ・浴室・洗面室・予備室 -- を四階建てのように積層しています。サービス諸室の天井高は1,850ミリです。
天井の高い部屋には上方に窓を設けています。そこから空と屋根しか見えませんので、とても気持ちがよいです。また、天井が通常の倍くらいあり、モノがスペースの下半分にしか現れません。ダイニングだったらカレンダーとか時計とか、いろいろなものがスペースの下半分に出てきます。生活するということは、空間的に言えばそういった雑多なモノが出てくることだと思いますが、今行ってもこの家には、壁の上半分に何もありません。下側にはもちろんファックス機が置かれていたり、スケジュール表が画鋲で留めてあったりするのですが、上だけは全然ものがなく、いつも光が反射しているようなきれいなスペースになっています。天井高を高くすると日当たりや風通しももちろんよいのですが、それにも増してドメスティック・ランドスケープ的に、とてもよいと思います。和室も掛け軸が半分くらいまでしかこなくて、スペースの上半分はいつもきれいで、窓から空しか見えないようになっています。