アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
砥用町というのは、九州にある山に囲まれた林業の町ですが、今は吸収合併でなくなってしまいました。条件としてあったのは、林野庁の助成事業なのでスギを使いなさいということ。そして、町長さんからは、林業で栄えてきたこの町のシンボルとして、どこにもない木造建築をつくってくださいという要望がありました。
林業総合センターと名前がついていますが、実質的には体育館と集会所として使われています。この町はミニバレーボールという、バドミントンコートで柔らかいボールを用いてやるママさんバレーのようなものがものすごく盛んな町で、その練習場としてコートが二面つくられています。また、二階にはテーブルを並べて会議ができるスペースと、資料展示室という、子どもが林業に親しめるようにするための部屋があります。延床面積は約520平方メートルの小さい施設です。ただ、運動するという目的があるので18メートル×22メートルくらいのコートは無柱にしなければいけません。
スギというのはあまり強度がなく、残念ながら優秀な木材ではないので、あまり使いたくなかったのですが、そんなことも言っていられませんから、基本的には混構造にしています。外側の輪郭を全部スチールでつくって、その内側にペリメーターから若干オフセットさせてスギの壁の架構と屋根の架構を回しています。スギ材がサーフェスの軽量鉄骨のフレームと接触しなければ、カビたり湿気たりということがなくなるのでよいのではないかというところから少しずつ発想しました。
外壁側は1メートルピッチに軽量鉄骨の柱がずっと並んでいます。その内側にスギを格子状にした壁があります。このふたつが一体で効いています。中の床から2メートルくらいの高さまではスギの壁にして、少し汚い周りの造成地は見えず、砥用の山だけが見えるようにしています。
屋根にも軽量鉄骨を2メートルグリッドで並べ、それに対して45度振った方向にスギの格子梁があって、両者をスギのV字の束材で結んで、トラス構造としています。このトラスの成を大きくしたり小さくしたりすることで天井高は変わってくるため、天井高の必要なところとそうでないところで使い分けました。 そうすると、トラスの強度自体も強いところと弱いところが出てきますが、上弦材と45度振れていますから、相互に補完し合い、全体を成立させることは可能です。トラスの成と強度の関係を計算するソフトをアラップ・ジャパンがつくってくれて、それを用いて全体のバランスを取りました。最終的には評定をとって実現しています。
22メートルスパンというと、普通はどうしてもアーチになったりシェルになったりするのですが、その場合、その下に展示室があろうが体育館があろうが図書館があろうが同じ架構になってしまいます。ここでは、下に機能の異なる、つまり必要な天井高の異なる三つのスペースがあったということで、逆に自由に架構が表現できたと思っています。梁のピッチは、砥用の山並みになるべく合うようにスタディして決めています。外から見るとガラスの箱の中にスギの茂みがあるようなイメージです。
外壁は2メートルの高さまでスギにしました。どうせすぐ腐ってしまいますから、庇を回して足場なしで塗り替えられるようにしたというわけです。また、屋内からなるべくこの造成地を見せないで、山だけ見せるようにしたということも理由です。林業が終わった後に皆さんここでミニバレーの練習をするのですが、2メートルより上のところしか見えないので、夕方や夜間に外からこの建物を眺めると、ちょっと普通よりも大きい白いボールが空中で勝手に舞っているのが見えます。周りが山で照明も何もないので、その光景はひときわ目立ちます。それは体育館の眺め方として、とてもおもしろいと思っています。