アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
2004年にできた集合住宅です。道路を挟んでふたつ向き合った敷地を与えられて、集合住宅をローコストで建てるように依頼されました。A棟はコンクリート造で、B棟は鉄骨造です。
道路は一応商店街なので、どちらも一階は店舖、二階から上が集合住宅になります。方位の問題から、A棟は日当たりがあまり期待できず、B棟はわりと日当たり、風通しがよいと考えられました。そこでA棟の集合住宅部分は、基本的に窓がないかのようなつくりになっており、B棟は窓がいっぱいあるようになっています。A棟の壁面には、人ひとり分のバルコニーが出ています。それに面して一応開口があるのですが、有孔プレキャスト版で雨戸みたいなものをつくり、それを閉めるとひとつの壁面ができるようにしています。それで一応、採光は道路からはしない、通風と眺望だけは道路からするというようにしています。ですから夜は内部の風景が透けて見えます。では採光はどうしているかと言うと、ライトルームという光の井戸を3つ設け、そこからどのユニットも光を取るようにしています。そして、そのライトルームの下の部屋は四周をコンクリートで囲い、天井をFRPとして、上のライトルームから採光できるようにしました。
ライトルームは3つあって、壁面を黒くした黒いライトルームと、白くした白いライトルームがあります。白いライトルームの下には、スクリーンを入れました。光が干渉しあうことを避けるための遮光スクリーンです。この下の部屋は建具も家具もグレーで仕上げ、色のコントロールをしました。ライトルームの隣にある部屋には光を取り入れるための窓があり、ここには引き違いの窓を開け閉めすれば、通風がとれるようになっています。
ライトルームに面した開口部は、光を取り入れるためだけの窓なので、ディテールがほとんどない、巨大なガラスブロックのようなものとしました。採光窓は1,800ミリ角くらいです。地上三階とか四階にこれがあるのですが、室内で雲による明るさの変化などを感じるということはあまり経験できないので、とてもおもしろいと思います。
この時に考えていたのは、バルコニーから採光しないとなると、バルコニーに生活のいろいろなものが出てくるんじゃないかということです。洗濯物や布団を干す人がいるかもしませんし、プランターを置く人もいるかもしれません。またゴミを置いておく人もいるかもしれません。一枚の壁から突き出したバルコニーに、集合住宅でしかあり得ないようなさまざまなものが出てくるのではないかと思い、そういうことができるように計画しました。
向かい側のB棟は、一階が店舗、二、三階がメゾネットタイプの住戸で、合計で六戸入っています。日当たりがよいので全面サッシですが、非常に小さいサッシを並べており、一住戸に対して引き違いのサッシが10個あることになります。ですから細かく開け閉めすることができるのです。細かく開け閉めできるということは、窓が持っているさまざまな機能をより多く使えるということに繋がります。
商店街沿いの住戸であれば、視線は隠したいけれど自然換気はしたいとか、洗濯物を干したいけれどあまり人に見られたくないといったことがよく起こります。開口が一住戸に対して1個か2個しかない場合、あらゆる要求がその数少ない開口に集中してしまっていて、暮らし方がものすごく汚くなってしまいがちです。ですのでここでは内側にハンガーとカーテンレールがある10個の開口を一住戸に用意して、普通はひとつの窓でやっていることを、10段階に振り分けてやれるようにしました。
ファサードとしては、今でも興味深いものです。集合住宅でのアクティビティが、ファサードに普通とは違ったかたちで出てきています。プランニング上は、開口部に面した部分に螺旋階段を並べています。