アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
これはその次のプロジェクトです。はじめたのは4〜5年前だと思うのですが、「森山邸」というプロジェクトです。プログラムは、オーナーの森山さんと、お向かいに住んでいる幼なじみの広岡さんという方の住宅2軒と、あとワンルームマンション、その3つをつくるというものです。
森山さんと広岡さんというのは、ふたりともこの地に生まれ育ったおふたりで、森山さんの敷地に一緒に住み、同時に建物を建てるために収益を上げる必要があるので、賃貸のアパートもつくりたいということでした。
場所は東京の南で、昔からあるような古い住宅地です。中規模のアパートや住宅が縦横規則正しく並んでいて、日本的で魅力のある住宅地となっています。地域社会というのが残っていて、隣がみんなお友だちというか地域共同体のコミュニティがあるような場所です。
森山さんはもともとここで酒屋さんをやっていたのですが、酒屋をやめてここに住むということでした。最初は、店子さんもオーナーの家も全部一体の建物というのをスタディしていました。普通のワンヴォリューム案だったのですが、しかし敷地がすごく大きいので、このやり方でやると周囲に比べてひときわ大きな建物が建ってしまいます。周りがみんな庭をもって、庭に自分の植物を並べたり、洗濯物を干したり、かなりあけっぴろげな地域共同体の風景がまだ残るところだったので、あんまり大きいヴォリュームをつくると周囲に圧迫感が出てしまうと感じました。また、6戸のうち1戸は幼なじみ、他の人たちは赤の他人、というのもバランスが悪く、合体させるのがちょっと不自然なように感じていました。
最終的にたどり着いたのは全部バラバラにするということでした。バラバラにすると、広岡さんのお宅と全然関係のない学生の人たちの家が並んでも風景としておかしくないというように思いました。しかも、バラバラにすることで周りのヴォリュームより小さくなるのですが、庭をもてます。一戸一戸、すべての住宅が庭をもてるというのは面白いと思いました。
通常の集合住宅の設計では、隣との関係をどう仕切るかというのが問題となってきて、いかにお互いに無関係で住めるかというのがテーマになるのですが、「森山邸」の場合は逆に隣同士どういう風に関係をもつことができるかということがテーマになってくる。違う形を選ぶことでテーマが変わってくるんです。また、バラバラにすることで生まれる開放感というものも、ある新しさを感じました。そういうわけで、住宅というより部屋に等しい、部屋と呼んだほうがよいような大きさのものが並んでいます。
これは模型です。各住宅が庭をもっているわけですね。住戸によっては庭のヴォリュームがひとつだったり、ふたつだったり、4つだったりとさまざまです。かつ、庭との関係も囲み型の庭があったりその逆があったり、目の前に庭があったり屋上庭園があったりというように、庭と住戸の関係もさまざまです。庭と家との関係というものが多様なものになります。
分棟形式のメリットとして他に考えたのは、バラバラにするとストラクチャーとか部屋の形が同じである必要がなくなるということです。形が違うものが並んでいくということが、ある風景として醜くなく、ある調和をもって現れるのが、バラバラにするというスタイルなのではないかというように思いはじめました。連続性と多様性を同時につくり出すということが大きなテーマのひとつになりました。