アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
「Flower House」という名前をつけました。何で「Flower House」という名前にしたかといいますと、平面を花みたいな形にしたからというのもありますが、もうひとつはクライアントの趣味のひとつが庭いじりということもあったからです。
これはヨーロッパの住宅です。ヨーロッパのクライアントで、歴史的な保存地区に建つものです。彼の家の横にもう一軒つくりたいということでした。ただ、要求条件が非常にユニークだったのが、彼が非常に庭が好きということで「庭つきの家」をつくりたいということではなく、「家つきの庭」をつくりたいということだったのです。つまり庭が主役なわけですね。庭にたまたま家がついているのをつくりたいということでした。
全体的に敷地が傾斜していて、その緩やかな傾斜にペたっと張りつくように建っています。室内に微妙に各ステージがあってコンタラインに平行に床が切られています。屋根も周辺に平行に下って分かれています。周辺が斜面なのですが、部屋の中だと階段になるわけですね。このように各レイヤーで場所を取るためにこういう形になってきました。全体的に各室が切られているような連続しているような、流動的な有機的な空間になってきたわけです。
高いところと低いところで高低差が1メートル以上あるところにベッドルームがあって、お風呂があって、書斎があるという感じです。エントランスの横はリビングのような応接のような場所です。ここはキッチンやダイニングというようになっていますけど、全体としてはワンルーム的なものです。
「SANAA展」という展覧会がヨーロッパを巡回しているのですが、スペインのレオンという街で開いた時、インスタレーションをつくってほしいといわれ、つくったのがこの「Flower House」の1/2の模型です。この縮尺で、長さが10メートルくらい、天井高が3.6メートルの高さだったので、1.7メートルくらいの女性であれば中を歩けるような巨大なものになりました。模型と実物の中間みたいな大きさのものです。それをインスタレーションとしてつくりました。周辺に緑を展開しながら、中庭もあります。クライアントの趣味である庭づくりというものが非常に大きい。
この建物のコンセプトのもうひとつは、アクリルでつくったということです。外皮をガラスでなくて厚いアクリルにして、それが外皮としての役割だけでなくてストラクチャーにもなっています。屋根を支えるのは外皮としての壁柱です。ですから室内には柱とか壁がありません。屋根が空中に浮いたような状態です。アクリルは断熱材でもあります。ヨーロッパの中でもこの建物が建つあたりは日本よりも寒いのでこういった断熱効果のあるもの、アクリルという新しい素材を使えないだろうかということでやっています。
東京都現代美術館で現代美術の展覧会をやったのですが、そこにこの模型をもってきて展示しましたので、ご覧になった方もいらっしゃると思います。