アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
次に、青森県の十和田市に建つアートセンターです。
十和田というのは最近、十和田湖町と十和田市で町村合併をしたところです。明治になって開拓されてつくられた、歴史的なグリッド状の街です。この真ん中に「官庁街通り」という非常に美しい桜と松の並木道があるのですが、その官庁街通りが近年の合併や庁舎移転によってビルがいくつかなくなっていって、通りの景観が歯抜け状態になっている状況です。その官庁街通りの壊れつつある景観どうやって再生するかという問題に対して市は、アート施設をつくり、空き地に美術活動を誘致することによって、昔とは違う風景ですが、通り全体を活性化できないかということを考えはじめました。
ナンジョウアンドアソシエイツという美術の人たちと市が主導して、通り全体のマスタープランをしています。 彼らのアイデアというのは「官庁街通り全体を美術館に見立てる」というものです。通りに対して「美術館」という建築概念を使うのは、非常に面白いコンセプトです。あいた敷地のいくつかには作品が置かれたり、もしくは休憩場になったり、イベント場になったりします。そのあき地のひとつに美術館を建てるということになりました。
プロポーザルで、僕はこういう建物を提案しました。これは独立した施設ですけれども、官庁街通り全体を美術館と見立てた時の一部ですから、通りとの関係が非常に重要なわけです。向かいのあき地に正面を向くように角度を振っています。
この美術館は、永久展示の作品が多いという条件でした。作品が変わらない場合は作品に一番あった部屋の形、採光方法を個別に考えることができるので、「森山邸」みたいな感じで独立分散配置ということを考えました。別々にすることで全体として空隙の多い透明な感じになり、向かいの空き地や通りを歩く人がこの美術館を見た時に建物の中がよく見えるようになります。ヴォリュームがバラバラに建っているので双六みたいな全体平面です。
建物と建物の間にできる隙間空間も展示室になります。開放的な建物をつくることで建築物と都市空間というものを分けずに連続させようとしています。官庁街通り全体を美術館にするというのは、建築というより都市計画的なアイデアですので、それもあって建築物として単体で考えるのではなく都市の一部にしようとしています。
それぞれのヴォリュームは非常に高い天井だったり、非常に低い天井だったりとそれぞれ違う形となっています。庭にも作品が置かれて、全体として施設内の活動が建物の中だけで完結するのではなく、敷地の外にも開放されていくような連続性ということを考えています。
これは初期につくった模型です。ヴォリュームとヴォリュームがあって廊下でつながれていくというものです。ヴォリューム同士の隙間はイベント的なことやカフェに使われたり、展示に使われたりします。ヴォリュームが高い密度で集まったところは、外部ですが内側っぽい空間になります。
建設中の写真です。この前の冬くらいからヴォリュームを徐々につくりはじめました。初夏の頃にはだんだんと緑が入ってきました。いろいろなヴォリュームが並んでいるのがわかると思います。全部が美術館というわけではなくて、多目的ギャラリーみたいな展示にも使えたり、事務室もあります。天井高が10メートル近くある非常に大きなワンルームがありますが、カフェと図書館が入っています。人びとに開かれたコミュニティセンター的側面をもつ美術館です。