アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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西澤立衛 - 自作について
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2007 東西アスファルト事業協同組合講演会

自作について

西澤 立衛RYUEI NISHIZAWA

西澤立衛-近影

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森山邸 [2]
庭は舗装されず土のままである
庭は舗装されず土のままである

庭は土のままにしました。普通であれば東京では舗装するのが普通ですが、土のままにすることでなるべく庭と室内両方を使った生活というのを期待したのです。

最近は、インターネットで買い物をして、洗濯も室内でして、というようになるべく室内だけで生活が完結するようなことを期待する集合住宅が増えてきている気がしていますが、ここでは逆に中だけでなく外を使うことを強く期待する住宅をつくりたいと思ったんです。

1階平面 縮尺1/120
1階平面 縮尺1/120

これは平面図です。部屋の形も違いますし、階数も違ったり、地下があったりなかったりというような、調和しながら多様性も同時に生み出せるような住宅を目指しています。

外観
外観
庭とヴォリュームが反復する
庭とヴォリュームが反復する

これは竣工時に上から撮った写真です。周辺とは大きさが違いますが、庭とヴォリュームが反復していくというようなある構造、生活が自然に外に出ていくというような建物と庭のの関係は引き継いでいます。

最後に木を植えました。庭を土のままにすると木を植えられるという魅力があります。これはコーナーから見たところですね。まだ木を植える前の箱だけが並んでいる様子ですが、設計を進めている聞に庭ということがテーマになってきて、庭というのはいろいろ面白いことが起きるということを感じはじめました。

途中から、箱の穴を大きくして庭と室内が似ているという状態を考えはじめました。箱の中だけど穴があいて開放的で、庭なんだけどヴォリュームに囲まれて閉鎖しているという、お互いが連続するものを設計の途中から目指しはじめたわけです。形は違うけれども、ある全体としてひとつの、住まう人たちのための風景をつくるというものです。

木は徐々に伸びてきて、時間が経つにしたがって風景が変わってきています。最終的に森みたいになれば、住んでいる人だけではなくて、道行く人にとってもインパクトがあるのではと思っています。毎日通っている道の横に神社や鎮守の森があるというような感じで、何本もある駅への道のうち、その道を通りたくなるような魅力がこの通りにも生まれるとよいな、と思っています。

この住戸には若い女性の建築家が住んでいてSOHOとして使っているのですが、彼女は、外に家具や自転車や植物を出して、中も外も使えるような生活をしてくれています。他の住戸もそうなのですが、彼女の庭の向こうに別の人の庭があるというようにつながっています。

窓から庭を見る。庭の向こうに別の庭が連続する
窓から庭を見る。庭の向こうに別の庭が連続する

これは森山さんのダイニング・キッチンです。隣のおばさんが声をかけやすいように大きな窓がついています。森山さんのダイニング・キッチンの先が庭ですね。その先にまた別の人がいて、さらに先に逆側の路地が見えるという、透明性というか、開放感が感じられるような風景をつくろうとしています。

中央にアイランドキッチンとダイニングテーブルが置かれた住戸
中央にアイランドキッチンとダイニングテーブルが置かれた住戸
ヴォリュームとヴォリュームで囲われた庭
ヴォリュームとヴォリュームで囲われた庭

これはまた別の人の住居です。周囲に庭があるというタイプなのでキッチンが真ん中に配置されます。四方の庭に面してサッシュがついて出入りできるようにするため、家の中央にアイランド型キッチンがあるというものです。

これは「森山邸」の中でもっとも小さい住宅ですが、逆にもっとも大きい庭があります。ここに庭の木を植えてハーブ園芸みたいなものを住んでいる人がつくりました。土にすると庭でいろいろやりたいことが出てくるのかなと思いました。ここの庭はヴォリュームとヴォリュームで閉鎖しています。

これは最近の風景です。室内も外も緑が多くなってきています。何となく、中と外がどちらも植物と人の生活があふれるような空間にしたいというようなことを、森山さんが考えてやってくださっているのだと思います。


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