アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
西沢2013年に開催された第2回瀬戸内国際芸術祭の、夏会期に合わせて小豆島でつくったカフェのパビリオンです。敷地は小豆島の福田港の近く、福田地区にある茸田神社の境内です。境内の横には、旧福田小学校の校舎と体育館を機能替えした「福武ハウス」があり、そこは芸術祭のプログラムが多く集まる場所なので、そこと繋がるように喫茶店をつくることになりました。
芸術祭のための建築ではありますが、神社の境内は子どもたちが日々遊ぶ生活空間でもあり、宗教空間でもあるので、基礎をつくって土工事をするような建築物をつくることに抵抗がありました。どうしようかと考えるうちに、ただ土の上に置いただけの建築がよいと思い、最終的に遊具のような、基礎がない建築を置くことにしました。基礎がないので、屋台と一緒で動かすことができるパビリオンです。
旧福田小学校の体育館のトイレを改修してキッチンにし、境内側の建物には客席だけを置き、神社と小学校を連続するかたちでつくりました。基礎がない建築ということから、どういうかたちがよいか考えました。ひとつは、建築の底面が平らでなく、むしろボートのようにカーブさせた方が、建築と地面の設置面積が最小になって、抵抗が少なく引っ張って動かすことができるのではないか、ということで、薄い板がめくれ上がったようなかたちをふたつ組み合わせて、屋根の鉄板と床の鉄板がお互いに支え合うような構造体を考えました。
屋根と床がお互いに支えあうことでこのかたちが成り立っています。2枚の四角い板からできた建築ですが、2枚の四角い板はおのおの角と角がくっついて、2枚の隙間に空間が生まれます。床となる下の鉄板は厚さが19ミリ、屋根になる上の鉄板が6ミリです。おのおのは角が留まっていて真ん中はフリーで垂れてくるので、かたちとしては自然な懸垂曲線になります。ガラスは入っておらず、境内が地続きに中に入ってくるような、風通しのよい空間です。
施工担当は「豊島美術館」の時と同じく鹿島建設の豊田郁美さんです。瀬戸内海は造船業が盛んということで、豊田さんは船大工の人たちを呼んできて、陸の上で船のようなカーブの建物をつくりました。構造はアラップ・ジャパンの金田充弘さんです。屋根も床も歪んだ長方形なので、金田さんのアイデアで、角と角をボタンのようなもので留めてお互いにくっつける方法にしました。中央部分はたわむので、角は高いところに設置しなければならず、最大で4メートル以上の高さになっています。基礎がない建築で、境内の地面に置いてあるだけなので、移動できる遊具のような建築です。角の高さを、神社側を低くして体育館側を高くすることで傾斜した屋根として、天井高の異なる場所をたくさんつくりました。
神社の社殿が石段の上にあって、角のひとつをその石段の高さに合わせています。なのでいちばん低いところでは、子どもでも座らないと入れないくらい低くなっています。子どもが日常的に遊ぶ境内に連続する場所にしたかったので、真砂土がめくれ上がった様子をイメージして、建築を境内の土と同じ色に塗りました。