アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
西沢「サーペンタイン・ギャラリー・パビリオン(2009年)」という東屋のプロジェクトです。ロンドンの大きな公園の中央に、サーペンタイン・ギャラリーという現代美術館があり、毎年夏に建築家を招待して、公園の中に人びとがくつろげる仮設の休憩所をつくっています。夏が終わると解体して、美術の愛好者や美術館に売って予算を獲得し、また翌年に別の建築家を呼んで休憩所を建てるという、継続的なプロジェクトです。われわれは2009年に参加しました。
ロンドンは雨が多いので、「屋根をつくる」というのがわれわれのひとつのアイデアでした。既存の木を避けるように、雲のようなかたちの屋根をつくりました。壁がなく、四方からアプローチして通り抜けていける、透明なパビリオンです。木があって建築がそれを避ける事によって、木を中心とした丸い空間が建物の外に生まれて、建築がカーブすることがむしろ建築の魅力になっていくように考えて建築と環境をつくりました。
床が緩やかに上がっていってサーペンタイン・ギャラリーへと繋がっていくのですが、それに合わせて屋根も高いところから徐々に降りてきます。ジョギングコースがあり、物資や車なども走ることを考慮し、屋根のいちばん高いところは6メートルなのですが、少しずつ下がってきてサーペンタイン・ギャラリーの窓の軒の高さに向かっていきます。高さ1メートルまで降りてきたところは子どもしか入れない空間です。幅を変えたり高さを変えたり、さまざまな空間をつくろうとしています。
ロンドンは雨がよく降るところです。屋根には樋をつけずに、屋根の端から雨がそのまま流れ落ちてくるようなかたちになっています。雨が滝となり、壁のようになります。屋根はアルミを磨いたものを傾けて、外の風景が遠くに見えるのではなく、天井に逆転して映り込みます。緑に包まれるような屋根下空間をつくろうとしたのです。直径6センチの細い丸柱を立ててアルミの屋根を支えています。部分的にアクリル板を立て、風除けとしています。
集会所は人びとの集まるイベントホールですが、この公園にはサーペンタイン・ギャラリーを知らない人もたくさん来るので、夏にこういうイベントをやっているということが公園中に広く伝わるように、屋根が緑や空や人びとの活動を映し出し、外へと発信していきます。